第9話 また病院
翌日、本当にリアストに書いたように昼休みに電話がかかってきた。それは、進の思わくとは違って、先生が病状を見たいから再診して欲しいという旨を伝える内容だったが6億円当てて調子に乗っている進に迷うことなどなく、定時になると早速、速攻、交差点の角にある皮膚科・小児科へと向かった。今度は、この前と違い、病院に入る前からまるで進のことを待ち詫びていたかのように芽衣子が進を見てニコニコしてくれているように感じられた。受け付けの小窓に進が顔を出すと、やっぱり芽衣子はニコニコと微笑んで話しかけてきた。
「すみませんね。先生がもう一度見たいでと言うもんですから」
――またまた、本当は、ぼくに相談したい事があるから呼んだんでしょ? ぼくがリアスト書いたから知っているんですよ。
進は、小説と現実の境目がよく分からなくなっていた。無理やり自分のストーリーに現実を押しはめようとしているようにも自分で思えた。
診察は、特に問題もなく大丈夫だということで、薬もこの前、渡されたものをそのまま使って下さいということだった。しかし、本当に先生が確認したくて呼ばれたようで、進のリアストの展開とはズレてる様だった。
――きっと会計の時言うぞ、芽衣子さん。
『別れた旦那と子どもたちのことで相談したいからどこかで会ってもらえませんか?』ってね。
「多摩野さん」
「はい」
会計窓口から芽衣子が進を呼んだ。
「410円です。今日は、薬はありません。この前お渡した物を続けて下さいね。お大事になさってください」
――あれ、それだけ?
「あれ、それだけですか? 旦那と子どもたちの相談は?」
進は、思い切って声に出して訊いてみた。芽衣子は、少し驚いたような表情を見せたが進を見つめ直して
「どうしてそれを? 聞いてくれます?」
――ほら来た。リアスト通りだぞ。
進は、待ってましたとばかりに小説に書いた通りにニコニコしながら
「聞くだけですよ。解決はできません。ソパンで話しましょうか?」
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