それでも、アリスは行く 〜〜無秩序なハーモニー〜〜

石山コウ

introduction 1

 山のふもとに一人、年若い男が横たわっている。

 実はこの男、死んでいる。

 数時間前、頂上から真っ逆さまに落ちたからだ。

 この後どうなるのかというと、四日後、レンジャーによって発見された。

 当然、家族の元に帰されて葬られるのだが、それだけではない。


 ここは3800年。

 当然、人々の認識は変わる。

 それは、死はただの通過点。

 死体からデジタル変換して、データ生命体として生き直すからだ。


 けど、この男、アオキ・ヒュウガはちがう。

 データ生命体として生き直せない。

 死を望んでいる人たちがいるからだ。


 そう、この死は仕組まれたもの。

 この後ろで動いている人たちによって。


 ただ、この人たちにとって想定外がある。

   * 四日で見つかる。

   * 家族の元に帰される。

   * 生きたままの死。

 このようなこと、本来の目的ではない。

   * 四日で見つかる → 一生見つからない。

   * 家族の元に帰される → 身元不明。

   * 生きたままの死 → 白骨化した死。

 そう、デジタル変換させないことが本来の目的であるのだ。


 そこから、ほころびが出るとは、この時点のこの人たちにとっては思いもしないだろう。

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