海外旅行……?

「あーあ。ほんとは今日プールのはずだったのになあ」


見てた映画で海のシーンが出てきたから、今日開かれる予定だったプールのことを思い出した。

最近気温が一気に上がってすごく暑くなってきたから、外にある学校のプールはしばらく休みになっちゃった。

友達とも外で遊ぶのはダメみたいだし、私もおとなしくうちにいるしかなくて暇だったところに、映画好きのお姉さんが一緒に映画を見ようって誘ってくれて、一緒に見てたんだけど、電話がかかってきてお姉さんは行っちゃった。


「茜ちゃん、電話に代わってもらえる?」

「はーい」


電話に出ていたお姉さんから代わってほしいって言われたから、一旦映画を止めて電話のところに行く。


「もしもし?代わりましたよ」

『映画を見てるのを邪魔しちゃってごめんね』

「あ、おじさん。どうしたの?サファリパークに行く日が早くなったとか?」

『流石に行く日は早くはならないんだけど……君に電話を代わってもらう前に話を聞いてね、今暑いから暇そうにしてるみたいだから、これから行く所に誘おうと思ってさ』


てっきりサファリパークに行く日が早まったのかと思ってたら違うみたいで少しがっかりしたけれど、今度どこかに行く所に一緒に連れてってくれるみたいだ。

この暑さで色々中止になっちゃったし、せっかくだから行ってもいいかもと喜びそうになったけど、わざわざ私を誘いに来るなんてなんだか怪しいような気もする。

でも、どこに行くのかは少し気になる。行くなら涼しいところがいいな。天気予報でしか知らないけれど、北海道とかが涼しそうでいいかも。


「行くってどこに行くの?暑いところだったら行きたくないよ……?」

『今度行くのは暑いところじゃなくって、涼しいところだよ』

「もしかして行き先は北海道だったり……」

『——ああ、これを先に言うべきだったね。行き先は国内じゃなくて海外なんだ』

「え?海外?」


まさか海外に行くなんて思ってもいなかったから、無意識に聞き返してた。いきなりそんな事言われても、旅行に行く準備とか何にもしてないんだけどな。


『そうそう。まあ無理に行かなくてもいいし、出発まであと二日くらいあるからゆっくり考えてよ』

「別に行きたくないわけじゃないんだけど……海外に行くにはパスポートが必要なんでしょ?私パスポート持ってないよ」

『それはこっちで申請しておくから心配しなくても大丈夫。あとは君が行きたいかどうかだからね。また明日くらいに電話しようと思ってるんだけど、それでいい?』

「明日私暇だからそっちに行って話を聞きたいんだけど、おじさん大丈夫?」

『え、明日かい?えっと……昼間ならいつでも来て大丈夫だよ』

「じゃあ明日午前中に行くね」

『分かった。待ってるよ』




次の日、いつもの場所に行くと約束の時間より少し前なのに、もうおじさんが椅子に座って待っていた。


「あれ?まだ約束の時間よりも前なのにおじさんもう来てたんだね。私ももうちょっと早く来ればよかった」

「いやいや。別に早く来たわけじゃないんだけどね。午前中は特に予定はなかったし、ここは自動販売機もあるから、君が来るまで本でも読んでいようと思っていただけだよ」

「ふーん……それで昨日、いきなり海外に行かないかって言ってたけど、どこに行くのさ?」


昨日聞いた話だと寒いところに行くって言ってたから、多分北の方に行くと思うんだけど……まさか南極とかじゃないよね……?


「行き先はカナダ北部だね。行くなら手続きするけど——」

「おじさん、まだ私に言ってない事あるでしょ」

「す、鋭いなあ……やっぱり聞こえてた?」

「私が普段から心の声なんて聞きたくないって事くらい、おじさんにも言ってたはずだけど。それに急に海外に行かないかなんて言われたら何かあると思うじゃん」

「今度カナダに調査しに行くみたいだったから、ついに君も行かないかなって思ったんだよね。ほら、最近暑いからさ。まあ君の力を借りたいのもあるけれど……君の能力って前は制限があったでしょ?でもあの毛玉ねこが来てから成長しているみたいだし……どうかな?」


私を誘ったのはただ調査に協力してほしいからだった。おじさんの言う通り私の心を読み取る能力は毛玉が来てから成長している。

前は相手が嘘をついている時に握手してたり、頭をなでられていないと心の声は聞こえていなかったんだけどな。

今じゃ少し集中すれば聞こえちゃうから、私はちょっと嫌だ。

でも、電気のスイッチを押すような感覚で切り替えることができるから、いつもは何にも聞こえないようになってる。


「この前海外の研究所であった事故と関係してるの?確かアメリカにもここと同じような研究所あったし」

「関係ない……とは言い切れないかな。そこから逃げ出した可能性だってあるんだけど、アメリカの研究所のデータが無いから確認できないからわからないらないんだ」

「えー、旅行だと思ってたのに……絶対楽しくないじゃん」


おじさんが言ってたせ説明だと旅行なんて気楽な物じゃないことくらい、小学生の私にだってわかる。

だからこそ気分は落ち込むし、自然とため息も出ちゃうのは仕方がないよね。

危なそうだし、危険なところだって分かってて行くくらいなら暑くても友達と遊んでた方がいいような気がする。


「まあまあ、もうちょっとだけ話を聞いてよ」

「聞くだけならいいけど、ちゃんと話してよね」

「わかってるさ。……それで今回は二つのグループに分かれて行動することになってて、一組目はアメリカの研究所にセブンと悪魔デビルが。そして二組目は、異常が起きているカナダ北部に最中と君の二人が行くことになってる。あ、ちゃんとスタッフも同行するから安心して」

「最中ちゃんと一緒なのは嬉しいんだけど……でも全然安心できないよ。だって二人だけで異常を解決しないといけないんでしょ?」

「まあ、そう言う事になるかな。カナダで起きているのは原因不明の異常な暑さみたいなんだ。この暑さの原因の調査を最中と君にしてもらおうと思ってたんだ」

「えー……暑いのが嫌だからおじさんの話を聞きに来たのに、これから行く予定の所も暑いの?」


今、日本もすごい暑いから涼しいところに行けると思ってたのに、また暑いところに行かなくちゃいけないのは嫌だなぁ。


「暑いとは言ったけど、今の日本よりは涼しいはずだよ」

「ホントかなぁ~?」

「それにカナダ全域が暑くなってるわけじゃないから、行くなら上着とかも持って行かないとね」


異常な暑さだって言ってたし、それを引き起こしたのは毛玉みたいな変異生物だったら日本よりも暑かったりして……なんて考えちゃうけれど、涼しいところもあるみたいだから行ってみてもいいかな。


「あ、そういえば何日くらいの予定なの?」

「予定かい?カナダだけなら三日だね。他の研究所が全部無くなっちゃった影響で、それ以外にも色々と調査の依頼が来てるから、もしかしたら続けて別の場所に行くことになるかもしれないね。まあ君は無理せず帰ってきてもいいからね?観光がしたかったら、最中に任せて色んな所を見て回ってもいいんだからさ」

「そこまで言うなら、私行くよ」


色んな所を見て回ってもいいっておじさんがそう行った時、私は行くことに決めた。

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