第6話 隠れた優しさ
「私達、ここら辺を捜索してるんです。だから……特徴とか教えてもらえれば、見つけられるかもしれません」
「……そうか。それは有り難いが、お前等に協力するつもりは無いぞ?」
「分かっています。皇さんは強い信念をお持ちですから。ただ私は……協力したいんです」
「……そうか」
病院の近くから音が聞こえてくる。
……皆だ。
「お待たせ……!他の所でも生存者がいたから、運んできちゃった」
「早速手当てを始めましょう!」
怪我人たちを奥の部屋へ運び、重傷者からベッドに横たわらせる。
皇さんは、黙ってそれを眺めていた。
「……なぁ、あの人何なんだ?(小声)」
「医者なんだって。敵じゃないから大丈夫だよ」
「医者!?ならあの人に協力してもらえば……」
「協力する気はないって。はっきり断られちゃった」
「はぁ……それじゃ、仕方ないか」
それぞれ分担して、治療を進める。
素人がやっていい事ではないけれど、手術も行った。
メスで切って、縫って……。
それだけじゃ効果がなさそうだし、不安でいっぱい。
治療を進めていくうちに、夜が明けてきた。
まだ全員の治療が終わったわけではないけれど、かなり楽になった気がする。
「やっと終わったぁ~!!」
「疲れましたね……。休憩しましょうか」
「賛成」
ソファに腰掛け、持ってきていた非常食を食べる。
「まさか本当に……全員の手当てをするとはな……」
皇さんが、驚いた表情で立ち尽くしている。
「おにーさん誰?」
「皇紅さん。医者なんだって」
紫雲以外には言ってなかったから、軽く紹介する。
「へぇ……そうなんですね」
「へへっ、凄いでしょー!」
「ああ。その意志は尊敬する」
「なら、何で手伝ってくれなかったんだよ」
「お前、失礼だな……。ま、俺は死にかけている奴を地獄へ引き戻したくない。静間……いや、彩音には言ったな」
「何で下の名前で呼んでるんすか」
「別にいーだろ。嫌ならお前だって呼べばいいじゃん」
「……」
紫雲はこちらを無言で見つめてくる。
「わ、私も夏目って呼ぶからさ……。夏目も良いよ?」
「……サンキュ」
そう言うと、視線を逸らされた。
どうしたんだろう……?
「二人共関係が進展しちゃった感じ!?えぇ~!いいなぁ~……」
「じゃあ……水無瀬君も瞬君って呼ぶね」
「やったぁー!僕は彩ちゃんって呼ぶね!可香谷さんは?」
「私は……今のままで結構です。今更変えるのも変な感じがするので」
私も、夏目って呼ぶのには少し抵抗がある。
何か……変な感じするし。
「お前等、五感は一つしかねぇのに……手当てはどうやったんだよ?」
「情報を共有し合いました。静間さんや紫雲さんは、感覚がとても優れているので……私達も手伝ってもらったんです」
「なるほど。で、お前等はこれからどうすんの?」
「私達は……今、協力してくれる仲間を探しているところなんです。世界を元に戻す為に」
「……そうか。なら、ここももうすぐ出ていくのか?」
「そのつもりです。だから……勝手に来て、勝手に助けて……すみません。その人達の看病をお願いしたいんです」
「やだね」
「「えっ……」」
皇さん、なんて意地悪なんだ……!!
「俺もお前等についていく」
「「えっ……!?」」
「仲間を探してんだろ?……言っとくが、妹達を探すためだからな!」
耳を赤くして言う。
皇さんが仲間になってくれるなんて……めっちゃ心強い。
仮に私達が大きな怪我をしても、適切に対処できるし。
「……怪我人の面倒は見てやるよ。で、全員回復したらお前等に合流する。それでいいだろ」
「勿論です!ありがとうございます……!」
「医療に携わってくれているお方が仲間だなんて、心強いです」
「そうだな。でも……合流するとして、一人で歩き回るのは危ない」
「なら、僕が皇さんといるよ。あ、皇っちって呼んでもいい?」
「呼び名は勝手にしろ」
「瞬がいなくなるのは……結構デカいけどな」
「戦闘能力が一番高いのは瞬君だもんね……」
「大丈夫だよ。彩ちゃんも、夏目っちも、可香谷ちゃんも、皆強いから。僕に頼らずとも、相手に勝てるさ」
「瞬……と言うのか。お前、主力なんだろ?俺と一緒にいていいのかよ?」
「言ったでしょ!皆強いから。それに、一人一人の力も強化しなきゃだし、いい機会だよ」
「……分かった」
そして、瞬君は皇さんと一緒にいることになった。
無事に合流できるか心配だけど、皇さんを一人にする訳にも行かない。
「可香谷さんの家ってここから遠い?」
「いえ……ここから3㎞程です」
「じゃあ、明日は可香谷さんの家にある日本刀を取りに行こう」
「「了解」」
「明後日は……」
話し合いをし、今日は病院に泊まらせてもらった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます