第7話 可香谷家は

翌日。


「うわぁ……でかっ……」


「マジでお嬢様だな……」


可香谷さんの家は……本当に大きかった。

庭も広く、噴水もある。

門から玄関まで30mはあるんじゃない?


その迫力に圧倒された。


「皆さん、どうかなさいましたか?」


「あ、いや……。こんな大きい家に住んでるんだなって思って」


「泥棒とかすぐ入りそうだけどな……」


「そういえば前に、知らない人がいました。それが泥棒なんですか!?お父様が指を切っていたので……てっきり裏切り者かと」


「「怖っ……」」


「可香谷さんのお父さんって一体……?」


「ある会社の社長です。(訳:組長です)」


「へぇ……。だからこんなに大きいのか~」


「世界が戻ったら紹介しますね!」


可香谷さんは満面の笑みを浮かべた。


うぅ~ん……この笑顔を守りたいけど社長は怖いっっっっ!!!

泥棒の指を切るんでしょ!?

通りで家に日本刀があるわけだわ……。


「さあ、入りましょう」


中に入ると、絵画や高そうな壺が目に入る。


「「(絶対壊しちゃダメなやつだ……!)」」


紫雲と目を合わせ、同時にそう思った。


「「「「「「「お嬢様!!お帰りなさいませっっっっ!!」」」」」」」


黒いスーツにサングラスという……ヤクザのような格好をした男の人達が出迎えてくれた。

しかも、顔には傷跡があって強面。

……これ、絶対カタギじゃないよね?


「ただいま戻りました」


「「「「「「「お嬢様が無事でよかったですぅぅぅぅぅぅ!!!」」」」」」」


めっちゃハモってるし……癖が強いなぁ!!

私の中で、ヤクザという怖いイメージが崩れ去っていく。


「お客様を連れてきました。この方達が、私を助けてくれたのです!」


「「「「「「「お嬢様を助けてくれて、ありがとうございましたっっっっ!!!おもてなしさせてくださいっっっ!!」」」」」」」


「「……(ポカーン)」」


開いた口が塞がらない。


「そうですね(笑)まずはおもてなししましょう!」


「「「「「「「かしこまりましたっっっっ!!」」」」」」」


有難いんだけど……今はそんなことしてる場合じゃなくない!?


「「「こちらのお部屋になりますっっ!!」」」


ヤクザに囲まれながら歩いていく。

扉の先には、高級ホテルのように豪華な家具が置かれていた。


「すっげ……」


「うん……」


「武器を探してまいりますので、ゆっくりしていてください!」


可香谷さんは、パタパタと足音を響かせながら行ってしまった。


「なあ……あの人達って何者なんだよ?」


「分からない……でも、可香谷さんのことを凄く慕っているみたい」


「瞬がいたら、もっと明るい雰囲気になってたんだろうな」


「そうだね(笑)」


二人で笑い合っていると、一人の男が近づいてくる。


「お嬢様をお救い下さり、本当にありがとうございます。お礼として、私に出来ることはございませんでしょうか?」


お礼……か。

なら、情報収集に協力してもらいたい。


「この状況について知っている事はありませんか?あの日、脳内に語り掛けてきた男の正体とか……」


昨日の話し合いでは、その男について話していた。

男がいた場所になら……手がかりがあると思ったから。


「申し訳ございませんが……存じ上げておりません」


「そうですか……。他に何か情報はありませんか?例えば、協力してくれそうな人とか……」


「私の知り合いでしたら何人かいますよ。紹介しましょうか?」


「ありがとうございます!」


私は、深く頭を下げた。


「「「お待たせいたしましたっっ!!お茶とお菓子ですっっっ!!」」」


「あ、ありがとうございます……あはは」


美味しい……!

……けども!!


そろそろこのテンションにも疲れてきたな……。

夏目も同じなのか、ぐったりとしている。


「お待たせしました。使えそうな武器を持ってきましたよ!」


「おう、ありがとよ」


可香谷さんは両手いっぱいに武器を抱えていた。

それを机の上に広げ、一つ一つ説明してくれる。


「これは刀です。切れ味抜群ですよ!こちらは狙撃銃ですね。弾数は無限ではありませんが、沢山撃てるはずです。それと、これはスタンガン。電流を流せる優れものです!あと、これ……」


「ちょ、ちょっと待った……!ゆっくりお願いします!」


急なマシンガントークでびっくりしたよ……。

可香谷さんって、冷静なイメージがあったし。


「そうでした……。すみません……」


しゅんとする可香谷さん。

あ、眉が八の字になってる。

可愛いなぁ……!


「えーっと、どこまで説明しましたっけ……?」


「スタンガンまでだな」


「あぁ……そうでしたね。では、続きから説明いたします!」


「「……」」


武器のインパクトが強くて忘れてたけど、他の人達はずっと黙っていた。

やっぱりヤクザは喋らないんだね……。


「あ~……武器関連は瞬がいないと分からねーな」


「……そうでした!!やはり瞬さんに来てもらえばよかったですね……」


「「「「それなら心配はご無用ですっっっっ!!!」」」」


「うわっ!び、びっくりした……」


急に会話に入ってくるのは止めて欲しい。

心臓に悪いし……!


「紹介しようとしていた知り合いの中に、武器の専門家がいますので。その方に聞けば問題ないでしょう」


「その手がありました!ですが、その方は今どこに?」


「「「「「「「あっっっっっ……」」」」」」」


やばいかも……?

顔が青ざめていくヤクザ達の鼓動を聴いて察する。


「そういえば、今は連絡が取れないんでした……しかもあの方がいる場所は遠いですし……」


「その方はどんな人なんですか?」


「武器の密売者です。組長の話では、捕まったと聞いております」


捕まった!?

……それなりの理由があるのだろう。

それに、武器の密売者なら……!


「……じゃあ、刑務所にいるって事ですか?」


「逃走してなければですが……。もしや会いに行くつもりですか?」


「はい。可香谷さんが持ってきてくれた武器も、手入れをしなければ壊れると思うんです。だから、仲間として協力してもらえないかなって……」


「なるほど……でしたら、この地図をどうぞ」


「これは?」


両手を広げたサイズの地図を、5枚程渡される。


「協力者がいる位置を記しておきました。その人の得意分野、人柄、年齢等の情報も書いてあります」


「それは助かるな……!」


「ありがとうございます!」


瞬君、皇さんと合流したら、この人達に会いに行こう。

その前に……あの男の人がいた場所へ行かなくては。


「「「「「「「お嬢様!!大変ですぅっっっっ……!!」」」」」」」


「どうしたの?」


「「「「「「「組長がぁ……組長がぁぁぁっっっっ!!!!」」」」」」」


「……血の匂いがします。お父様に何かあったのですか!?」


「「「「「「「それがぁ……それがぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」」」」」」」


これは……嫌な感じがする。

音も……不穏な音だし……急がなきゃ。


「お父様っ!!」


玄関へ向かうと、組長?らしき人物が倒れていた。

可香谷さんはそれを感じ取り、必死で駆け寄る。


「おお……美麗か……。無事でよかった……」


「お父様は……お父様は無事じゃ……っ!!……誰にやられたんですか」


鼓動が暴れている。

可香谷さんの心が、溢れていく。


表情は見えないけど……きっと泣いているのだろう。

悲しくて寂しい音だった。


「あやつは……水無瀬瞬と名乗っていたな……」


「「「「……え?」」」

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