第4話 殺人鬼(?)

「ぐあぁぁぁっ!?」


水無瀬君のナイフが、相手の首を切り裂く。


「次は……お前だ」


「く、くそっ!てめえ、よくも仲間を!」


「うるせぇよ。黙れ」


「ぎゃあああああ!!!」


水無瀬君の言葉に、鳥肌が立つ。

その殺気で、足がすくんでしまいそうだ。


まるで人が変わったように、淡々と殺していく……。


「最後は……お前だけだ」


「ひぃ……!ゆ、許してくれ……!」


「これはお前らが吹っ掛けてきたんだよ?自業自得さ」


「うわぁぁぁぁぁ!!!」


最後の一人を、躊躇なく切り裂く。

血しぶきで汚れた水無瀬君……いや、その目を見て私は分かった。


彼は……”本物”だ。


「ふぅ~。終わった終わった~♪静間さん、お疲れ様」


「う、うん……」


先程の迫力も殺気もなく、いつも通りの笑顔に戻る。

本当に同一人物なのだろうか。


「折角見つけたこのビルも、汚れちまったな……。新しいの探すか?」


「いや、僕はこのままでいいよ!俺にとっては芸術だし!」


「相変わらず変な奴だな……」


「よく言われる(笑)」


……私は気付いてしまった。


水無瀬君は、殺人鬼だったのだと。

人を簡単に殺す事が出来る人なのだと。


「さてと、死体処理しなきゃ!手伝ってくれる?」


「……ああ」


「分かった」


水無瀬君の指示通り、処理を進めていく。


……あれ?

少し目が見えるようになってる!?


「今回の成果は……電ノコとナイフ二本、刀か……。結構良い収穫かも」


「だな。ナイフしかなかった俺らにとって、これは結構デカいぞ」


「僕一人だけ戦うわけにも行かないし、二人も武器を持ちなよ!何がいい?」


「水無瀬に任せる」


「私も」


正直、どれも水無瀬君みたいに使いこなせる気がしない。

まあ……彼が勧めてくれたものなら、いけるかもしれないけど。


「う~ん……そうだな。この中だったら、紫雲君は刀。静間さんは電ノコが使いやすいと思う」


「刀か……悪くねぇな」


「電ノコ……うん、やってみる」


音とかは苦手だけど、電ノコなら私でも扱えそう。


「あ、”この中だったら”だからね?それ以外なら、紫雲君は槍か弓。静間さんは、リボルバーとかを二丁持ちするのが良いよ。銃系なら何でも行けると思う」


「……また難しいもんを勧めてくるんだなお前は」


「二人なら簡単に出来ると思うよ?僕はそう思うから」


「そう言われたら、やるしかねえじゃねえか」


「うん、頑張る」


リボルバー……。


敵から奪うか、お店で買うかの二択。

紫雲君の槍か弓の入手も難しいし……。


「刀と電ノコを扱える仲間を見つけてから、調達しようか」


「そうだな」



***

次の日。


私達は、校門の前に立っていた。


「おい……マジかよ」


新しくなったばかりの校舎も、赤く染まっていた。


「じゃあ、死体が沢山転がってるかもね!」


「うぅ……怖い事言わないでよ……」


「ごめんごめん(笑)そういえば、能力に変化あった?」


「あ~……特に分かんねぇ……」


「……実は私ね、昨日の戦いが終わってから目が見えるようになったの!」


「本当っ!?」


「ぼんやりだけどね。二人の顔も近づけば見えるよ!」


「一歩前進したな」


紫雲は優しく微笑む。


「うん!」


「僕も何となく、身体能力が上がった気がするけどね!」


「あれよりもっと良くなるとかやべぇだろ……ま、心強いけどな」


「確かに。水無瀬君がいるから安心して戦えるよね!」


昨日の戦いを思い出す。

あんなに強い水無瀬君なら、どんな敵が現れても大丈夫だろう。


「よし、行くぞ」


「「了解!」」


教室に向かうと、そこには悲惨な光景が広がっていた。


「ひっ……!」


「これは酷いな……吐きそう……」


血まみれになったクラスメイト達。

机には、死んでいる人の生首が置いてある。


「……この犯人、絶対許さない」


私は怒りに震えていた。


「お前ら無事だったのか!」


「よかった……生きてたんだね……!!」


「皆……!!」


クラスメイトが、こちらに駆け寄ってくる。


「落ち着いて聞いてね……。多分、ここの生徒はほぼ全員殺された。今は、先生達が避難誘導をしているところだよ」


「嘘……」


「本当なんだ。僕達がここにいる理由は、生存者の確認の為だから」


「この犯人は分からないのか?」


「うん。進展したら、すぐに伝えるよ」


「頼んだよ」


それからクラスメイトと別れ、奥へと進んでいく。


「やめてくださいっ……!」


震えた声が聞こえる。

微かに泣き声も聞こえる。


今すぐに行かなきゃ。


「二人共、ついてきて」


早足で、声が聞こえた場所へ向かう。


助けなきゃ。

……助けなきゃ!


「誰か助けてっ……」


屋上に繋がる扉を開けると、女の子が刃を向けられていた。


「その子から離れなさい!」


「邪魔すんなよ……今良い所だっつーのに!!」


「……!逃げてください!貴方達まで殺されてしまいます!」


自分も怖いはずなのに。

助けてほしいはずなのに。


その人は、必死に私達の身を案じている。


とても優しい心の持ち主だ。


「いーよ!……僕達が負けるわけないんだから」


水無瀬君の体が動く。

私はその隙に、女の子を逃がした。


「待てやコラァ!女逃がすとかアホか!?」


「残念、君の方が馬鹿だ」


「うぜええええええ!!!」


男のナイフが、水無瀬君に向かって振り下ろされる。

それを軽くかわし、彼は男の心臓に蹴りを入れた。


「ぐふっ……!」


身体能力が強化されたのは本当の様で、心音が一つ聞こえなくなった。


「今回はナイフだけか……まあいいや。予備として持っておこう!」


「相変わらずの戦闘っぷりだな」


「それはどうも!」


「あの~……」


すると、逃がしたはずの女の子が立っていた。


「先程は、ありがとうございました……!何とお礼をしたらいいのか……」


「気にしないで!僕が好きでやった事だし!」


「それはそれで問題だけどね……」


「……あ、そうだ。自己紹介がまだでしたね。私の名前は可香谷美麗です」


「私は静間彩音!」


「僕は水無瀬瞬!」


「俺は紫雲夏目」


簡単な自己紹介をし、私達の目的を話した。


「人を殺してしまうのはともかく、その目的は素敵ですね!私も、仲間として協力させてもらえませんか?」


「勿論!」


「よろしくね!」


「可香谷の能力は?」


「私の能力は、嗅覚です。感情とか、色々なものの匂いが分かります」


嗅覚……か。

私達に協力してくれる人は、今の所能力が被っていない。

しかも並外れている。


これは偶然なのだろうか?


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