第3話僕は立派な大人

レナと景子と景子の彼氏の隆が喫茶店モフモフでかき氷を食べていた。

隆は高校を卒業したら、家業の豆腐屋を継ぎ景子と同棲する話しをしていた。

「そのオジサン、そんなにカッコいいの?」

と、隆が景子に言うと、

「レナが出会ったときから、カッコいいって言っていて、昨日帰りにわたし達のお会計までしてくれたの。魅力的なオジサンだよ」

隆はお冷やの中の氷ガリガリ噛んだ。

「景子ちゃん、もし、昨日のオジサンが来たら、お礼言おうね」

「うん、そのつもり」


カランコロン


扉が開いた。扇子をもったオジサンが現れ、座席にバッグを置くと、メニューを見ていた。

その時だ。

「あ、あのう、昨日はご馳走様でした」

小湊は、レナの言葉に反応して、

「君たち、毎日ここにいるの?」

「はい、ほぼ毎日」

「渋いなぁ~」

「あのう、良かったら一緒に座りませんか?」


「……い、いいよ」

『にやけるなよ!僕。僕は立派な大人なんだ。女子高生に声を掛けれたぐらいではしゃぐなよ!』

小湊はレナ達のテーブルに座った。

端正な顔つきの男の子も座っている。

「わたしは宮地レナです。彼女は小川景子ちゃんで、この子は景子ちゃんの彼氏の林隆君です」

レナは意外に、オジサンがいい匂いするのに驚き、そしてカッコよく見えた。

「僕は小湊俊博。ガスバーナーの営業やってます。あっ、店員さん、アイスコーヒーとソフトクリーム」

と、店員のおばさんに注文すると、おしぼりで顔を拭いた。

隆はニヤニヤしている。

「小湊さんは、いつもおしぼりで顔を拭いてるの?」

「ダメ?」

「い、いいえ。わたしのお父さんも顔を拭きます」

レナは緊張していた。


『な、なんだろ。小湊さんがこんなに近くにいると、ドキドキする』


「君たち、高校生だよね?ここの支払いは親からのお小遣い?」

「わたしと、レナは土日、ケーキ屋さんでバイトしてます。隆は毎朝3時には起きて豆腐屋のお手伝いをして、お金を作ってます」

「豆腐屋かぁ。冬は大変でしょ?」

「もう、冷たさに慣れました。小学生の頃から手伝っているんで」

小湊は運ばれたソフトクリームを舐めながら、

「僕が小学生の頃は、キョンシーごっこしたいたなぁ」

「なんすか?キョンシーって」

「君たち知らないの?ぴょんぴょん跳ねるキョンシー様を」

3人は頭を傾げた。

「あぁ~、ジェネレーションギャップだ」

小湊は口の周りをソフトクリームで汚しながら食べている。

まるで子供だ。

3人の高校生より、子供ッぽい。

小湊はストローでズズズッとアイスコーヒーを飲み終わると、おしぼりで口の周りを拭いて、伝票を2枚持ちレジに向かった。

「小湊さん、今日はわたし達が払います」

「いいよ、いいよ、明日、また会おう」

「……はい」

「土曜日、食事しよう。詳しくは明日。じゃっ」


「あのデブのオッサン何考えてるか分かんねぇから、食事はオレも付き合うからな」

「レナ、これってわたし達を騙そうとしてるんじゃ?」

レナは考えていた。

『土曜日、楽しみぃ。バイト休んじゃお。オジサンのプライベートが早く知りたいなぁ。指輪して無かったから独身のはず。彼女いたらどうしよう』

「レナっ!また、妄想してたでしょ?あのオジサン変よ」

「何で?」

「何でじゃねぇよ」

隆が言う。

「わたしは小湊さんを信じたいの」

3人の会話は、6時まで続き何かあったら、ソッコー逃げる事にした。

『食事って、小湊さんならありふれたファミレスを選ぶはずがない。きっと、しぶい店を選択するだろう。明日、確認しよっと』


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