第2話デブオジサン気付く
小湊は扇子で扇ぎながら、喫茶店モフモフに入店した。この日、彼はアイスコーヒーとかき氷を注文した。
シロップは安心のイチゴ。
お冷やと冷たいおしぼりが届くと、扇子をテーブルに置き、顔や首筋を拭いた。
「うぃ~、気持ちいい。生き返るぅ~……」
小湊は首筋を拭いている瞬間に、斜向かいのテーブルに座る女子高生がこっちを見ているのに気付いた。
『どーせ、僕はデブのオジサン。お前らの父親と年齢変わらんぞ。な、何見てやがる』
そう、思っていたらかき氷とアイスコーヒーが届いた。
彼はかき氷を口の中にかきこんだ。
「うっ、いってぇ~。キンキンのかき氷のヤツめっ!」
また、アイスクリーム頭痛に襲われた。
「ねぇ、景子。また、昨日のオジサン来るかなぁ」
景子はミックスジュースをストローでチューチュー吸いながら頭を傾げた。
「レナ、あんなデブのオジサンに何を期待しているの?パパ活?」
「景子、わたしさぁ、オジサン見てると落ち着くんだよね。大人の余裕を感じてさぁ」
「別にあんなデブのオジサンなんかじゃなくても」
「デブやハゲのオジサンって、極めてるよね?」
「何を?」
「……人生を」
カランコロン
「あっ、レナ、昨日オジサンだ」
「あっ、扇子で扇いでる。様になるなぁ」
「あーあー、また、おしぼりで顔拭いてる」
「わたしもマネしようかな?」
「辞めなよレナ。オジサンがこっち見てるよ」
2人はオジサンと反対側を向いた。レナの背後にオジサンが座っている位置。景子が実況中継する。
「オジサン、アイスコーヒーとかき氷注文したみたい。あーあー、かき氷をかきこんでる。そして、こめかみを押さえて、唸っております」
「ウソッ」
レナは振り向いた。
オジサンと一瞬目が合った。
『最近のわけぇモンは、礼儀を知らねぇのか?僕の食事風景がそんなに珍しいのかねぇ。あっ、かわいい方と目が合った。……動ずるな、僕は大人。そこまで、女に餓えてねぇよ。明日もいたら、声掛けてやろうか?』
『あっ、オジサンこっち見て固まった。……様になってるなぁ。明日も会ったら声掛けようかな?18歳だし、問題ないでしょ。でも、社会人と高校生の会話ってどんなだろう。……お父さんと話す感覚で話してみようかな』
小湊は店員を呼び、一言声を掛けて支払いをして、扇子で扇ぎながらモフモフを出て行った。
「景子、わたし達も帰ろっか?」
「うん。そうだね。この後、隆と会う予定だから」
「いいなぁ」
2人はレジで会計しようとすると、
「お客様のお代は頂いております」
「えっ?」
「どうして?」
2人には理解出来なかった。誰が払ったんだろ。
「こちらに、お座りになられたお客様から、お代を頂いております」
「景子ちゃん、あのオジサンだよ!きっと」
「でも、何で?」
「これが、オジサンのカッコいいところ」
「明日、お礼言おうよ」
「ね?わたしの目に狂いはないのだ」
「レナちゃん、バカみたいなセリフ言わないでよ」
「帰ろ。ご馳走様でした」
2人も喫茶店を後にした。
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