13号「転機」

「離してよキサキさん!おにーちゃんが!おにーちゃんがー!」

「こらゆみこ!行くな!」

「おにーちゃーん!」


「ふっふっふ、おいでたかしくん……」

「ううう……」


 キサキそっくりな魔教科書王が差し出す文房具と、最愛の妹の狭間で揺れ動くたかしくん。

 たかしくんを取り戻そうとするゆみこちゃんと、それを圧し留めるキサキ。

 全員の力関係は拮抗していた。


――――――――――――


「博士……ボクたちはどうすればいいかな?」

「…………」

 ケン一行に敗れ去った『なぜなに博士とどうして坊主』は、この戦いを達観した表情で見つめている。『どうして坊主』は、この時初めて『どうして?』ではなく『どうするべきか?』という問いを博士に投げかけた。


 博士は呟く。

「そうだな。我々は魔教科書王さまに忠誠を誓った身。いま再び魔教科書王さまに加勢すれば、容易く奴らを倒すことができる……。だが(※)」


 (※ 博士の結構長めの心情吐露)


「私は常に、様々な命題に対して、答を導き出してきた。だが、今日の私は、答えを出せない……否!、答えを出さない。何も答えない。そんな日があってもいいだろう。坊主?」

「うん!」


 早い話が何もしない。これは展開的に助かる。何か余計なことをしでかされると、また別の描写が必要になるし収集が付かなくなるからね!


 だが、国語亡者たちの方はそうもいかなかったようだ。


『ああ~』『ああ~』

「きゃー!」

「な、わっ、何だこいつら、倒したはずなのに!?何するんだ、やめろ、あっ……!」

 

 JKと魔法少女がもみくちゃになって、くんずほぐれつになっている姿に、何と言うかこう、よこしまなイマジネーションを掻き立てられて奮い立った一部の国語亡者たちが這い寄り、その魔の手を伸ばし始めたのだ。


 取り囲まれたふたりは成す術なく、無数の手に身体をまさぐられ。

  

 ついでにメアリーも同じ目に遭っていた。

メアリー:「ノー!oh……ahhっ…」

 

「くくく……さようなら、光の教科書戦士たち」

 状況が一変し、勝ち誇った笑みを浮かべる魔教科書王―—。



―――ブロロロ!ガオンブロロロー!


 雄叫びの様なエンジンが鳴り響き、路駐してある車を蹴散らしながら、巨大な塊が一同の方へ爆走してきた。どこで見つけてきたのやら、ケンが巨大なトラックを調達して戻ってきたのである。映画『激突!』に出て来たアメリカンなものだ。


ケン:「WOOOWWWWWWWW!スピルバーグ万歳!」

 魔教科書王を跳ねて別の教科書世界へ転移させ、一旦仕切り直すのだ!

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