八倒「ガン」
ドゴン!
ドゴォン!
ビルの谷間に、携行銃の中でも最大級の口径から放たれる射撃の咆哮と、煌めくマズルフラッシュが絶え間なく連なる。「バキューン!」とか「パーン!」みたいなかるーい音を超越した、重々しく凶悪な銃声。直撃したら肉片どころか血煙になるやつだ。
本来、M82バレットライフルは立ち打ちできるような代物ではなく、バイポット(銃身に備え付けられた二脚)を接地させて使う前提のものであるが、そこはほら。日々の狩猟で鍛錬に鍛錬を重ねてきた大造じいさんであれば立って扱うことも出来よう。人間、鍛えたら大抵のことは出来るようになるなる。
圧倒的なエネルギー総量の暴力を前に、流石の広辞苑も既にボコボコの穴だらけ。
(これは、まずいッ……!普通にやられる!!)
次々と打ちこまれる弾丸。
強烈な制圧力を前に、打つ手立てがないかに思われたキサキだったが――。
――だだだだだ!
「何やってんのアンタは!良い加減正気に戻りなさい!!」
「ざっ、残雪!?」バチーーーン!!
その昔、壮絶な謀略合戦を繰り広げたガン、【残雪】がナチュラルに駆け寄ってきたかと思うと、大造じいさんの頬に渾身の平手打ちをキメた。
流れるような黒髪に雪の様な白筋が走る、黒い和服の美女。
ものっすごく話を端折るが、要するに、長年の対決を経たのち、ある日突然美女に
元・鳥類のビンタは強烈で、魔教科書王の瘴気に侵されていた大造じいさんを一発で正気に戻すほど。「お前もだッ!!」残雪はそのままの勢いで、大造じいさんの肩に乗っかってたハヤブサにも正拳突きをくれてやる。以前痛めつけられたぶんを、ついでに返してやったのだ。「ギー!」ハヤブサは情けない鳴き声をあげてふらっふらと飛び去っていった。
「ほら帰るよ!村が大変なことになってんだから!」
「え、いや、しかし」
「口応え?」
「ひっ」
残雪が再び平手打ちの構えを取ったので、大造じいさんは両腕で顔を庇った。
これまでもこうやって立場を叩き込まれてきたのであろう。
こうして強敵として現れた大造じいさんは、もっとクソ強い嫁に追い立てられるように退場していったのであった。さもありなん。
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