六回目「算数アーマーたかし」

 詳細は省くが、どうして坊主との戦いを前に目覚めちゃったたかし君は真の力を手に入れて、古今東西の算数用具の集合装甲である算数闘衣が集まってきた。


 長めのバンクシーンで、定規やコンパス、分度器などを模した様々な文房具が、身体の各所にガシン!ガシーン!と装着されていく様をたっぷりと見せつけた挙句、たっぷりの逆光を浴びて、トドメに決めポーズ。そして「ええと、えーと……駄目だ思いつかない」決め台詞は出てこなかった。


 そしてゆみこちゃんの方もついでに、算数を司る魔法の力か何かで、マジカル算数魔法パワー的なものを操る美少女小学生算数戦士として覚醒する。キラキラするエフェクトで誤魔化しても、誰がどうみても全裸だろうというカットを一瞬交えて、世の小学生男子の多くに何かしらを植え付けたゆみこちゃんは「直径約3800kmの月に替わってお仕置きよ!」と、算数っぽい決め台詞で、変身した。


「な、なんだ?この力は……?は、博士……!なんなんだよ!わからない。判らないよぉ!この力は一体どこから来たの?ボクは負けちゃうの?博士!!」


 恐れて問う、どうして坊主は、この疑問を博士に『解決』してもらおうと、ケンと戦っている博士の方を振り向こうとする――。


 が。


「させるかコイツ!!」

 たかし君とゆみこちゃんは有無を言わせず駆け迫り。狼狽するどうして坊主を二人で挟み込むと、手にした文房具であらゆる攻撃を叩き込みました。算数タンデムです。


「痛い!いたた!痛い痛い!」

 三角定規の90度、60度、30度の角それぞれで、順番に、テンポよく、どうして坊主の肌をチクチクやり。

「いたいいたい!いた(ベチーン!!)

 教室以外では観た事がないような、1mの定規でおもいっっきり、半ズボンから丸出しのふとももを叩いたり。


 コンパスの針は流石に危ないので、持ち手の、捩じり手?とにかく、手で持って回転させるための部分を押し当ててグリグリしたり。あとそろばんを頭にあててゴリゴリして髪の毛を絡ませてすごく痛がらせたり。


「博士ぇぇ!どうして助けてくれないのぉォォ?なぜ……どうして、どうしてぇ!」

 

 どうして坊主は泣き出しました。たかし君とゆみこちゃんの勝ちです。



―――――――――――――――――――――――――


 いっぽう。


ケン;「―—ポリコレの何がいけないんですか!説明してください。多様性を尊重し、あらゆる人々に平等な機会を与えるのがどうしていけないのです!」


「い、いい質問だ……それは……時と場合による!長年続き、大勢のファンに支えられるシリーズものの主人公の人種や性的属性を突然変更するのは文化の破壊に他ならん!やるなら新しい作品を作ってそこで勝負をするべきだろう!ええい!この問題については簡単に答えは出せない!それが答えだ!判ったかい!?」


ケン:「しかし、それだけでは未だ続く従来の差別意識に囚われた人々は目覚めない!その作品がステレオタイプや固定概念を作り出す元凶ですらあるなら、そこから破壊を伴おうとも、変化し、成長していかなければ世界は変わらないのです!永遠に!」


 ケンと博士の戦いは、こんなとこで扱う問題じゃない議題での口論の応酬に変わっていた。博士の得意技であるアンサー真拳は封じられたのだ。

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