第六項「カウンタークエスチョン」

「さあ、現れよ国語亡者ども!こいつらを簡単な言葉で罵り、浅はかな考察で困惑させてやれい!」


 【なぜなに博士】の一声で、それまで人気の無かったビル群から、大量の人が、生気の失せた目でぞろぞろと歩み出て来た。「いいね……いいねをくれ……」「三行で頼む……」「ちょっと待って、会社の嫌な上司をイケメン外国人が論破して、周りの人が拍手喝采……」SNSに頭をやられた住人たちだ。膨れ上がった承認欲求に自我を蝕まれ、長文が読めなくなった上に、お前それ絶対嘘だろ、というエピソードを構築するのに必死な者たちである。


「ちっ、うっとうしい連中を呼びやがって……!」

 周囲を見回して吐き棄てた祀葉キサキは、ケンとメアリーに叫ぶ。


「こいつらは私が相手するッ!あんたたちはあの筋肉ダルマを頼む!」


ケン:「それはあんまりな提案です。良い考えとは思えません」

「うるせえ、四の五の言うな!!」

メアリー:「しのごの?知らない言葉です。それは一体どういう意味―—」


「それは質問だな?質問だなァ!!いい質問だねェ!それは、四の五の言うとは、なんのかんのと不平や文句を言い立てること、サイコロ賭博で丁(四)が出るか半(五)が出るか迷う様を表す慣用句なんだよぉ!!」


 うっかり疑問が湧いてしまったメアリーに、博士の強烈なアンサーが叩き込まれた。見た目は思いっきり、突進からの正拳付きだが、これは決してバイオレンスではない。質問エネルギーをなんやかんやで答素(答え元素)に変換し、答分裂こたえぶんれつを引き起こした際の衝撃波で吹っ飛ばしているだけ。


ケン:「め、メアリィィ!ガッデム!この筋骨ダルマのサノバビッチ!!」


 ビルの壁面に叩き付けられて開いた、メアリー型の大穴を見たケンが激怒した。


 

――――――――――――――――――


「くっくっく、じゃあボクの相手はきみたちなのかな?さあ、何して遊ぼうか?きみたちは楽しませてくれるのかな?ボクの果てしない問いの闇に耐えられるのかな?」


「うう……!」

「おにーちゃん……!」


 一方では、10メートルの距離で対峙する身長150cmのたかしくんと、139cmのゆみこちゃんと、145cmの【どうして坊主】の対決が始まろうとしています。


 にたりと笑う、どうして坊主のいやらしい笑みと問いに、たかし君とゆみこちゃんは怯みました。しかし戦わなければ生き残れない。ゆみこちゃんを守れない。


 たかし君がゆみこちゃんを守りながら戦うには、どんな計算が必要でしょうか?

 

 これは宿題です。次回までに考えましょう。

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