第四章「国語、こわれる」
これまでの問題を何一つ解決してないまま、またもやトラックに轢かれたケンたちの今度の転生先は、国語の教科書世界である。
が。
本来ならば古今の文豪たちが造り上げた美しい日本語に満ち、行間を読んだり文脈を理解したりする住人達が暮らす、言語が持つ無限の可能性が広がっていたはずの言葉の世界は、すっかり様変わりしてしまっていた。
近年、爆発的に普及したSNSの影響はこの世界にも及び、言語的倫理性や因果なんて二の次、とにかくその日その時その一瞬の感情を駄々洩れにして、
誤字脱字は当たり前、慣用句や比喩表現も壊滅状態。皮肉なんて勿論通じないし、ちょっとでも長い文章を使うと、すーぐ読み辛いなどと蔑まれてしまう。
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「おっせーな!マジで超待ったわ。やっと話が進められるわ」
人っ子一人居ない、ビル群の間のスクランブル交差点のド真ん中にどさどさと倒れ込んだケン他三名を待ち構えていたのは、腕を組んで仁王立ちしているブレザー姿の女子高生だった。
ケン:「うう……?さっきから一体何なんですか?今度はどうなって……ワーオ、君は美しい日本人女学生ですね」
頭をさすりながら起き上がったケンは、眼前の女学生の出で立ちに目を見張る。
「腰まで伸びるストレートロングヘアが風になびいています。スタイルは抜群ですが、少し野暮ったい印象を受けるのは、その地味な丸眼鏡の所為です。しかし、その奥でギラギラと光る鋭い眼差しは、とても強い意思を感じます」
「うるせえ、余計な文字数使うな」
国語世界の住人、祀葉キサキ(まつりば キサキ)が、ぴしゃりと言った。
「いいから聞け、アホども。いま教科書世界はやべーことになってる。粗末に扱われて役割を全う出来なかった教科書たちの怨念が具現化して、全ての教科書を統一しようとしてやがる。その名も魔教科書王。ヤツは統一した教科書を思うがままに支配する為に動き出した。お前らが巻き込まれた異常はその余波。そして私も、元は清楚な文学少女だったのに、改変に巻き込まれてこんなに口汚くなっちまった」
「だけど、教科書世界には復元しようとする力も働いてる。私たちはその力によって選ばれた。だからこうして巡り逢って、そして魔教科書王を倒す使命を果たさないといけないんだけど。ああ無理だわ、もうとっくに文字数オーバーしてんの。続きは次回な」
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