#9

「こちらの兵は何人死んだ?」

「2人。集まったやつらの1割ってとこだ。それ以外の面子もゆくゆくは死んでいた。……だから、奴らをこっちに引き寄せる必要がある」


 座席で作戦を話し合うリーダーと老龍は深刻な様子で、僕たちが口を挟む余地はなかった。後方を開け放したコンテナから見える景色から、トレーラーは何度も迂回しながらコウロ地区のランドマークを横切り、五車線道路を直進していることが分かる。


「ルーク、作戦変更だ。このままユガミの言う目的地に直進すれば確実に追い詰められる。だから、一時的に老龍のアジトを経由する。そこで一旦追跡をやり過ごすんだ」

「それで構わないか、ユガミ?」

「えー、あたしが行けばボコボコにできるのに……」


 不満そうに唇を尖らせる彼女の眼は桜色だ。あの時、彼女が力を行使する瞬間に救援に現れた老龍は、ユガミの赤い瞳を一瞥して微かに声のトーンを下げた。何かを知っているかのような態度の真意も掴めないまま、僕たちはコンテナに押し込まれたのだ。

 老龍の目的がまだ掴めない。リーダーとは昔からの知り合いのようだが、金や情で動くようなタイプには見えないのだ。本当に信頼していいのか?


 エンジン音が響く。助手席で周囲の様子を伺っていた老龍が舌打ちと共に背後を振り返る。


「……可恶クソッ

「もう追ってきたか……? どうする!?」

「早急に対処する」

「はいはい! あたしも行っていい!?」

「……貴女が出ると因果律が乱れる。ここは大人しくしてくれ」


 老龍は助手席のドアを開けると、トレーラーの屋根へ飛び乗る。コンテナが音を立てて揺れ、僕の視線は自然と後方に移る。

 敵は5台のセダン。窓から銃口を向ける者や、ルーフの上で膝を立てて匕首を構える者。そのどれもが精鋭なのか、先ほどの構成員とは比べ物にならないほどの圧がある。

 統率の取れた一団の先頭車両が、噛み付くようにコンテナに衝突する! 振動と共に火花が散る中、コンテナ上の老龍は声を張り上げた。


「俺の名を知らないのか。〈蝾〉ロンの一番槍は、お前たちを殺す用意ができている!」

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