#10
そこからの数分は、効率的で機能美すら感じさせる蹂躙だった。
コンテナの振動が止み、跳躍する肢体と長い髪が開け放たれた後方の景色に映り込む。老龍は最前列のセダンのボンネットをクッション代わりに、プリントされた代紋を踏みつけるように着地した。
「さっさと死ねッ、オラァ!」
一台目のセダンは急ハンドルを切り、ボンネット上の老龍を振り落とそうと蛇行運転を繰り返す。彼は曲芸めいた動きで体幹を維持すると、フロントガラス越しに1人目の運転者を蹴り落とす!
サイバネ駆動する肢体が煙を吐きながら、老龍の左腕に格納されていた武器を顕現させる。青龍刀だ。鋭い切先でエンジンを貫かれ、代紋セダンは横転しながら爆発炎上! 追走していた一台を巻き込み、乱雑なグラフィティの描かれたコンクリート壁に衝突する!
クロームメタルの脊髄に搭載された
「お命、頂戴いたしやす」
「……やってみろ」
鞘から繰り出された匕首の居合いと振り下ろされた青龍刀の鍔迫り合いだ。刃が十字に重なり、空中で無数の剣閃が迸る!
狭い足場での戦闘だ。足を踏み外して車の屋根から滑り落ちないよう、二者の衝突は接近戦から始まる。
一糸乱れぬ攻防だった。敵ヤクザである獄門會の統率はマスゲームめいた動きで、睨み合う二者のうち老龍だけを狙い撃つかのような援護射撃を他車両が行う!
数度の交錯の末、優位を取ったのは居合いヤクザだ。匕首が青龍刀を弾き飛ばし、バランスを崩しかけた老龍の心臓を貫かんと刃を突き立てる!
「……貼山靠」
次の瞬間、吹き飛んだのは居合いヤクザの方だ。老龍が背を丸め、静かに息を吐く。
独特の構えから背をぶつけるように体当たりを行うその技は、かつて極東で伝承された伝統的な拳法技であるという。その名を鉄山靠、八極拳における代表的な奥義だ。上半身のインプラントによって威力が増したそれは、凄腕の拳法家さえも卒倒させるという。
老龍はそのまま特殊改造された脚でルーフの天窓を踏み壊し、運転手である構成員に力づくで尋問を行う! 運転手が震えながらボスのいるセダンを指差せば、数秒後の老龍はその車両に乗り込んでいた。
「……元を断つぞ」
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