小さじ3杯 醤油、万能だし!




 女神からもらった情報に齟齬がありすぎてイライラしながら、王太子殿下の容態を確認した。

 命に別状はないが、食道や胃が爛れていると。


「えっと……とりあえず何か、食べれそうなもの作ってみましょうか?」


 ベッドでぐったりとしている、薄ら青白い顔になってしまった王太子殿下を見て、流石に可哀想になってきた。


 王太子宮の厨房に来た。

 ここに置かれている食材は間違いなく大丈夫だと言われた。ならなんで、王太子殿下は毒に侵されているのかっていう、ね。

 

「王宮で避けられない食事会がありまして」


 魔道士が悔しそうにしていた。自分の失態だと。

 彼は王太子殿下の護衛も兼ねているらしい。


「ふーん。あ、お米あんじゃん!」

「パエリア用ですね」

「あーね」


 適当に野菜も見繕い、厨房に戻った。

 先ずはお米をお鍋で炊く。

 軽く洗って浸水、お水はお米から指の関節ひとつ分くらいまで。

 はじめ中火で、沸騰したら弱火。適当に蒸らしておけばだいたい食べれる。

 

 お米が出来上がる間に、人参と玉ねぎと、持参した白菜を小量みじん切り。

 お鍋にお湯と【無限】濃縮だし醤油を適当に入れ、みじん切りの野菜を入れる。

 

 お米が炊けたら、それも適量お鍋に。

 お米がある程度柔らかくなったら、溶き卵をこれまた適当に流し入れ、ちょいと蒸らす。

 シンプル雑炊の出来上がりだ。

 病人といったら、やっぱこれだよね。

 ビールは惜しいけど、【無限】濃縮だし醤油があれば大概なんでもつくれるし。いいか!


 ――――醤油、万能だし!




「おまたせしましたー」


 王太子殿下の寝室に雑炊の鍋ごと持って行った。

 先ずはメイドさんが王太子殿下の目の前で毒見。

 軽く引いた。

 それなら、次から私が毒見するよと言うと、なぜか全員に止められた。なんでだ。


「もらおう」


 王太子殿下がのそりと体を起こして、口をパカリと開けた。

 をい、待て。

 なぜに当たり前のようにあーんしてもらおうとしてるんだ。

 さっきのプリンのせいか? お前は何歳だ? ん?


「殿下って何歳なんです?」

「なぜ私に聞く……」


 魔道士が不可解そうな顔をした。それもそうかと、殿下に聞き直すと、なぜかムッとした顔で二八歳だと言われた。

 まさか同じ歳だとは思ってもみなかった。

 ボロボロでクタクタもやしな見た目だから、四十近いのかとか思っていた。


「とりあえず、自分で食べてください」

「……あぁ」


 スープボウルによそって殿下にて渡すと、渋々受け取って一口食べた。

 そして、徐々に口に運ぶスピードが上がり、最後には掻き込むようにして三回もおかわりまでした。


「うまい。苦しい」

「そりゃ、四杯も食べれば誰だって苦しいですよ」


 アホかな? とか失礼なことを思いつつ、お腹いっぱいになって、ベッドで幸せそうに眠りだした殿下を眺めた。


 ――――無限は醤油で正解だった!?



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