第18話

私が診察室で発達障害だと告げられた後すぐに彼は「発達障害は発達障害を欲しがる」とツイートしていた。主治医は自身のことが障害当事者だと、ネット上ではオープンにしていた。ネットでしか彼を知らない人たちは、彼がどこの病院で働くだれなのかも知らない。私はアウティングする気は無かったが、ふたりで秘密を共有している感覚に疲れてきた。転院すべきなのかもしれない。特に福祉制度も何も利用していないから、別に転院してもさしさわりはない。

そのうちに彼の性的な妄想はエスカレートしていった。別に医師がAVを鑑ることは違法ではないが、彼が週に何度も話題にするのを見て「?」だった。そういうことをオープンにするのは、私という女が見ていることを意識しての一種のハラスメントじゃないかと疑ったりもした。

仕事をしながら、鍵垢から彼のツイートを眺める日々を送っていると、私の人生はスマホのサイズにまで縮小してしまったのかと愕然とした。そのうち私の全人生、全人間関係はスマホ一台に収斂してしまいそうな危機感があった。SNSの人間関係など虚像だとわかっていた。それがリアルの人間関係(というほど強いものではなかったが)とリンクすると重かった。

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