第16話

通院し始め半年くらい精神科医から「あなたは発達障害だと思います」と言われた。もしかしたらそういう病名がつくかもしれないと思っていた。治療方針も何も変化するわけではなかった。ある日、突然「発達障害」という障害者の世界が眼前に現れたわけだけど、それが特別なことだという感じはなかった。

自分にとっては、結婚や離婚の方がずっと特別、というか異常なことだった。なぜなら結婚/離婚は、だれか他の人間とつながったり、離れたりすることだからだ。他の人間が自分の生活に入ってくることは脅威だった。

それが、診断名によって、健常者と障害者のふたつの世界の住人になったのだとしても、そこにはだれかとの関わりが生じたわけではなかった。わたししかいなかった。だれかに話すということもなかった。今度、老親に会ったら、そういう人が親戚にいたかどうか、聞いてみようと思った。

福祉制度の利用を主治医が口にしなかったのは、彼が勤務医だからだろう。診察でTwitterの話はしなかった。彼が身バレを気にしているのは明らかだった。過去のツイートで「ばれたらどうしよう」と別のアカウントとやりとりしていた。でも、私以外にだれも気がつかないのが逆に不思議な気がした。

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