第15話

主治医がどういう気持ちでTwitterに書き込んでいるのかは聞いたことがないから知らないけど、彼が現在の仕事のうさばらしに書いているのは明らかだった。彼は優秀なのかもしれないが、どこか視野教唆というか、たまたま頭がよかったから医学部を受験したら合格して、その合格した時点が彼のこれまでの人生における頂点だった(と自分で書いていた)。

精神科で扱う患者や疾患には、いわゆる心の病気のほかに、老人の認知症も多く、主治医は慢性期病棟担当だったため、その仕事が嫌で嫌で仕方がないのは伝わってきた。彼はそちらの仕事が本来はメインで外来はそれほど出ているわけではなかった。Twitterには匿名/実名で発言している医師も多かったが、主治医のアカウントは次第にフォロアーを増やしていき、現役の医師であることは公開されているために、医療以外の人にも一目置かれるようになり、かなり大きな社会的影響力の末端に手が届きそうではあった。それだけ読者数が多くなると「身バレ」のリスクも高くなるのがつねだったが、彼は次第に強気になっていった。強気というか、向こう見ずというか、普通の人なら言わないよねそんな感じの悪いことを書いていた。

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