第11話
県立病院の医師に貰った薬は実によく効いた。薬の効き目が落ちたなと思ったら、次の診察でそういえばよかった。医師は私の話を集中して聞き、処方を若干変えた。頭の中のもやもやとした重さは雲散霧消した。
作業の集中力が増したし、夜の寝つきの悪さもなくなった。県立病院に行くのは月一回の頻度だったが、例の一件からお互い、診察室で穏やかにやり取りができていた。でも診察室で見せている、丁寧で穏やかな顔はかの医師の一面でしかなかった。
Twitter上では彼は身バレをかなり警戒しているように見えた。でも「見えた」だけで本当にそうだったのかはわからない。高速道路を最大スピードで運転することにスリルを感じるタイプの人間がいるものだが、そういうタイプかもしれなかった。
現在の仕事に満足していないのか、彼は実にいろんな患者をあしざまに言った。匿名アカウントだから言えるのだろうが、老人、生活保護受給者、知的障害者、精神障害者、その他ありとあらゆる社会的弱者。「自由診療に流れる研修医が多いのも当然。初期研修で生活保護老人の治療ばかり押し付けられるんだから」とツイートしていた。きっと彼にとっては当たり前の感覚なのだろう。彼がTwitter上で公言している年収を思うと当たり前ではなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます