第3話

 最初はTwitter上の匿名アカウントがだれか…なんて全く分からなかった。でも、ある日更新されたツイートを見て、どこかで見たことがある建物だと思ったら、数カ月前から通院し始めた県立病院だった。その匿名アカウントが、開始されたのは三年前だった。開始直後はあまりツイート数もなかったが、あるツイートにコメントが付いていた。病院に出入りのある製薬会社の社員のようだった。そこにアルファベットで名前が書かれていた。それはいまの主治医の名前だった。

 このインフルエンサーが主治医なんだ…と呆然としたが、そういうことは起こりうることだった。いまは誰もがアカウントを作成して自分のツイートを発信している。

 通院頻度は月1~2回だったが、次第に次回通院を心まちにしている自分の気持ちに気づく。淡い恋心だったが、結婚指輪もしているし、落ち着いているし、普通に結婚しているだろうから、何の期待もしていない。だいたいぐんと年下なのだ。だからツイートと実際の通院とのパラレルで彼について詳しくなりつつあった。

大規模な公立病院の待合室に座っていると、いつも同じ女性が座っているのに気が付いた。正確には、いつも同じような印象を与える女性…というべきだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る