第2話

 それまでメンクリへ行ったことがなかったので、とりあえず近所の県立病院で診察を受けた。県立病院は割と広い敷地に、大きな近代的な建物が三棟建っていたが、中に入ると、施設の老朽化が目立った。それも必要なところだけは最新の設備を導入しているため、最初は受付を済ませて、どのように進んだら、精神科の外来にたどり着けるのか、わかりにくかった。とにかく何とかして、たどりついたのだ。

 精神科医は自分よりずっと若い男性医師だ。三十代なかばだろうか。もっと年上かもしれない。真面目そうな面持ちと、対応の柔らかさ、話し方は誠実な印象も受けた。処方された薬により嘘のように気分が軽くなった。

 現実は簡単に軽くならない。世の中は、逆向きに進まない。今後は、フリーランスとして仕事を続けていくことは、厳しくなるのかもしれない。薬漬けになることは避けたかったが、眠れないのは困った。

 しかし、私は以前からSNSを見ていて、ひょんなことからこの主治医が有名なTwitter上のインフルエンサーが新しい主治医であると知ってしまった。知るべきではなかったのだ。でも、何かに気づいて、そのインフルエンサーがネット上に残しているデータを漁ったらドンピシャリだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る