居ない間に

 部内戦当日。僕は、仮設テントでスコア・ボールの管理を任された。

 「…じゅ〜ん。水、無くなっちまった」

 「分かりました〜。アキラ先輩、僕水汲んでくるのでテント任せていいですか?」

 「おー」

 長峰ながみね先輩もとい央先輩が作っておいたドリンクを飲み尽くし、僕に水を汲んでこいと要求する。これはマネージャーの仕事でもあるので、大人しく水を汲みに行った。


 「あ〜おっも。10キロはやっぱり重いなぁ」

 部活で使っているタンクの容量は10リットルなので、大体10キロと同程度。しかも、中身が液体なので、なかなかに重かった。

 落としてこぼさないように気をつけながら、なんとかコートまで運びきる。

 コートに着くと、水汲みに出る前と雰囲気が少し変わっていた。何というか…こう、ピリピリした空気が漂っている。

 この空気の原因は気になったが、テントを央先輩に任せているので、とりあえずタンクを持ってテントへ移動した。


 「央先輩、テントありがとうございます。水持ってきました」

 「ん?おー。お疲れ、じゅん

 「…何があったんですか?」

 コート内の空気はやっぱり悪くて、いつもの明るい雰囲気は全く無かった。あまりにも変わり過ぎているので、央先輩に訊ねてみる。

 「あー、後で、ナ」

 飄々としている央先輩らしからぬ、歯切れの悪い返事が返ってきた。


 僕が居ない間に何が起こったってんだ。誰か教えてくれ。

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