静かな図書館のビッチな司書さん。後編
その日は特に勉強に集中できてなかった、連日の欲求を発散できていなかったのが原因だろう。
普段なら気おつけているのにその日は油断していたのだ。
「ぁぁぁあ゛、無理、集中出来ない。司書さんとエッチしたい!」
「えっ、そうなんですか?」
背筋がピンと固まる、暑くもないのに汗が噴き出るのはどうしようもなく焦っているからだろう。
背後からの声はすぐ後ろから聞こえてきていた。
「それは困りますね、ここは図書館なのでベッドなんてありませんし。」
「ぇ、と。あの今のは…」
ハリボテの機械のようにガチガチと首を回して声のする背後へと目を向ける、そこにはいつもの笑顔の彼が待っているのだが、私には死刑を告げる裁判官のようだった。
もしかするとこのことが原因でこの図書館を追い出されるかもしれない、何とか言い訳を探るがそんなものはある筈も無く、2人の間には気不味い沈黙の時間が流れるのだった。
そんな沈黙を破ったのはやはり司書さんであって、半ば諦めて立ち退く準備をしようと思った時、背後から聞こえた言葉は耳を疑うものだった。
「出来るとしたら、ハグまでくらいかな?」
「…… すぇ?」
これは驚くくらい高い声がでてしまった、静かな館内に声が響く。
他の利用者は誰も居なくて良かった。
「僕がここで出来ることだとそれくらいかなぁ」
「ぅえと、それは司書さんから抱きしめてもらえるってこと… ですか?」
「んー、まぁ勉強に集中できるなら、ね?」
「できまーす! 勉強、すごいヤれます!」
こんなに幸せなことがあるのだろうか、地獄から救いの梯子が降ってきたような感じだろうか、ともかく司書さんの提案はこれほど無く魅力的な提案だった。
今ならきっと国立トップの学校だって目指せる気がする。
「図書館では静かにね」
「あっ、すいません…」
興奮して声が大きくなっていたようだ、司書さんかが指を口の前に持って来てシー、っとジェスチャーする。
その仕草がまた綺麗で見惚れてしまうのだ。
「これは2人だけの秘密にしてね」
「もちろんです、誰にも言いません」
「じゃあ、おいで」
そう言って私に向かって両腕を伸ばしてくる司書さん。
遠慮がちにその細い腰に腕を回して抱きしめると、本のインクの匂いと司書さんの甘い匂いが鼻腔を抜けていく。
彼もこちらの腰を抱いて密着してくるので、司書さんの綺麗な顔が間近にあって心臓が高鳴ってしまう。
それだけではない、片方の腕で腰をホールドして空いた方の手で頭を撫でてくれている、心地いい、この快感から離れたくない、ずっとこうしていたい。 きっと幸せってこういう事を言うんだ。
と思ったのも束の間だった。
「すいませーん!」
ここからは見えない受付から元気な子供の声が聞こえてくる、私たちは驚いてパッ、と離れてしまう。
地元の小学生が本でも借りに来たのだろう、もしくは司書さん目当てか、どちらでも今この時間を邪魔されたのはいただけない。
「今日はここで終わりだね、行かなきゃ」
「ぇあ… はいっ」
「志望校に合格したら”最後”までしちゃう? なんてね」
「えっ___」
勉強頑張って、と言って受付に走っていく司書さん。
いまだに鳴り止まない心臓が体温を上げている、これが恋なのかもしれない。
でも、そんなことより何よりも「ビッチだ」と溢してしまうのだった。
そんなことがあり彼女は勉強を頑張りメキメキと点数を伸ばしていくのだが、それをクラスメイトに問いだたされ、何とか誤魔化して図書館に通い詰めるのだが、バレてしまい司書さんが皆んなと共有になるのはまた違った話。
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この世界にも純愛はあると思いますよ?希少ですけど。
もっとはちゃめちゃなギャグテイストの幸せな表舞台はいつか書きます。
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