コンカフェ子息のナンバーワン 後編

「今日もお疲れ様、いつもありがとうね」

「いえ、こちらこそです。」

「んー、ホントにキミってば気の使える優しい男の子だよねぇー、ウチの店にこんな男の子がいるのが不思議だわ」


そう言いながら彼に話かけるのはこのお店の店長で、何かと困ったことがある時に助けてもらっている人だった。


「そんなことないですよ、良いお給料をもらってるんでこれくらいはしないと」

「ふぅん。あ! 制服まとめてクリーニング出すから今日は置いて帰ってね」

「あ、わかりましたー」


更衣室へ入って着ている制服を脱いで店長へと渡してから、お疲れ様です、と言って店を退店する。


左右を確認して歩き出す、店から家までは徒歩で帰るのだが、最近毎回自分の帰る道と全く同じルートで着いてくる女性がいるのが気がかりだった。

初めは考えすぎだと思っていたのだが、普通に歩いている時には後ろにいるのに、信号などで止まると追いついてこない、何気なく後ろを振り返るとその場で止まって携帯を触っていたりするのだ、そんなことが7回も続けて起きているのだから流石に気付く。ストーカーだ。

実害は無かったがその事は店長や警察にも相談していて見回りを強化してくれるとのことだった。

正直なにもされてないんじゃ警察も動けないらしい。


そんなことを思いながら外へ出ると流石に遅い時間なので空は暗くなっていた。従業員用の出入り口は路地に面しており更に薄暗かった。


いつものことなので気にせず歩いていると突然後ろから呼び止められる。


「あの、長男くん」


突然のことに驚き振り返るとストーカーの女性だった、ニヤニヤとした笑みを浮かべてこちらへ近づいてくる。


「ッ!」


あまりのことに恐怖で声がでない、身体も突然のことで硬直して動かせなかった。

その間にいつのまにか女性は目の前までやってきて彼の頭をなでる。


「あぁ、ようやく触れ合えるのね、驚かせてしまってごめんね、でも貴方が悪いわ、私というものがありながら今日も色んな女に色目を使って、女も女で長男くんのことを性的な目でしかみてない、あの店の店長だって今頃長男くんが脱いだ制服の匂いでも嗅ぎながら1人でシてるだろうし、そもそもあそこのビッチ共に長男くんと働く資格なんて1ミリもないのに…」


1人でずっとぶつぶつと言いながら頭や顔をベタベタと執拗に触ってくる、頭では逃げて助けを呼ばないと、と思っていても身体は自分の意思とは違って動いてくれない。

彼女の指が顔から口へと動き、閉じた口の中に無理やり侵入してくる。


「柔らかい唇、綺麗に並んだ歯ね、噛んじゃダメよ、可愛い顔して誘っているの? でもここじゃダメよ、お家に帰ったらたくさん愛し合いましょう」

「あッ… ォェ」


口内へ侵入した指が頬や歯茎を撫でる、時折り喉の奥へ指が入ってくるのでえずいてしまう。


「じゃあ一緒にお家に帰りましょう、帰ったら料理も作ってあるの、きっと気に入ってくれるわ、そのあとはお風呂に入りましょう、汚い女の視線を洗い流さなくちゃね、その後はベッドで沢山楽しみましょうね」

「…ゥ」


抵抗もできず、どうして自分がこんな目に遭うんだろうと目から涙が溢れてくる、女性はそれを見て更に興奮しているようだった。

このまま自分は連れ去られて死ぬかも知れないと思ったその時、反対側の路地から2人組の女性が走ってきているのが見えた。

ストーカーの仲間だろうか、彼はもうまともに考えることもできなくなっていた。


「コラッ! お前何してる!」


走って来た女性の怒号が飛ぶ、彼を撫でる手を止めて振り返るとそこには警察官がこちらに走ってきている姿だった。


「ッ! クソッ」


ストーカー女性が彼の手を握って咄嗟に反対側に走り出すが、まともに動けない彼を引っ張って逃げることは現実的ではなく呆気なく捉えられてしまう。


彼の目の前でストーカー女性は逮捕され、その後は落ち着くまで警察署で過ごしたが、その間も涙は止まることなく、彼の心に大きな傷を残すことになった。


ストーカー女性が捕まった時にしきりに言っていた「絶対に諦めない」という言葉が幻聴のように頭に響くのだった。


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無理やりヤラせても良かったんですけど、こっちのがリアルですよね。

他の作者さんの冒頭とかでもニュースで捕まってる人出てきますし。

きっとこういう人です。

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