体育会系の歓迎会に恋人を送りたく無いですよね 後編

飲み会が始まってから1時間程度経過していた、彼は最初の1杯をやっと呑み切ったぐらいだったのだが、明らかにおかしい、なんだか頭がボーッとして身体がふわふわと気持ちいい感覚がある。


「大丈夫か、新人、もう酔っ払ったのか?」


「いやぁ、だいじょうぶれふ」


舌も上手く回らない、なんと言うのだろうか、眠りに入るか入らないかのあの心地よい感覚を覚えていた。

上手く思考がまとまらなくなっている。


「そうか、じゃあここら辺でレクリエーションでもやろうか」


『良いですねー』『今回は何ですかー』『新人くんも楽しめるモノにしてくださいよー』


この会社では毎回恒例になっているレクリエーション、ビンゴだったり、モノマネだったり、時には野球拳なんかもやったりしていた。

今回は男性がいるので他の社員も何をするのか気になっているようだ。


「今回やるのは、王様ゲーム! でも、普通の王様ゲームじゃない、これはクジで王様を引いたやつが他の全員の希望を叶えるっていう、まぁ言うなれば逆王様ゲームだな」


『なんだそれー』『王様になった人の負担凄そうw』『新人くんがなったらどうしよう』


皆んな思い思いに自分の希望を口にしている、そんなことを後目に先輩はクジを1つだけ取り出す、そしてそのクジを彼の前に突き出す。


「ほら、こういうのは新人から引いていくもんだ」


突き出されたクジは1つだけ、いつもなら、軽く冗談を言ってこんなモノに参加するなんてしない、でも今日はなんだか違っていた。

とっても楽しい、良い気分だったのだ、だから差し出されたクジをなんの迷いもなく引いてしまう。


「おっ、新人が王様だな」


彼女がニタリといやらしい笑みを浮かべる、当の本人はよく分かっていないようだった。


『新人くんが王様だ』『え、あれで良いの?』『まぁ、所詮ただの遊びでしょ』


「じゃあ、命令を聞いてもらおうかな、私は王様とのキスを命じます」


『ちょっと、それは』『彼女いるんでしょ』『新人くん、嫌なら断っていいからね』


なんだか周りが心配してくれているらしい、でもたかがキスだ、別に良い、いつも彼女としているし、それに今は気分が良いから問題ない。

考えがまとまらず、何が正解かわからなくなっている彼は舌の回らない口で答える。


「いいれふよ」


『えっ、ちょっ』『え、いいの』『だったら私も』


「じゃあ新人、口閉じないでね」


れろぉ、と舌を彼の唇に這わせていく、抵抗する様子なんて無いし、抵抗も出来ないだろう、トイレに行った隙に酒にクスリを混ぜた、思考能力も停止しているはずだ。

そのまま口内へ侵入する、熱くて柔らかい舌を絡めていく、クスリで呂律も回っていなかったからだろうか、彼の舌はぎこちなく、それでも必死に舌を絡めてくる様は見ていて加虐心をくすぐられる。


はぁ、と息を吸い、また口内へ侵入する、唾液を多量に含んで彼の口内へと送る。

ごくん、と流した唾液を飲む音が密着している彼女にはハッキリと聞こえただろう。


クスリのせいか惚けたその顔はどの美術品より美しく、この世のどの男より可愛く映る。


どれくらい経ったか分からないくらい彼とのキスを堪能し、彼を解放する。


「私はこれで終わりね、まだまだ叶えないといけない人は沢山いるから、ね、王様」


『『ゴクリッ』』


社員たちの生唾を飲む音が聞こえる、彼のポケットに入っているスマホがバイブ音を鳴らしている、彼女は彼のポケットからスマホを取り出し立ち上がるとスマホの電源を落とすのだった。



まだ席の時間は2時間程ある、クスリが効いている間は堪能させてもらおう。

既に社員に囲まれてメチャクチャにされている彼を見ながらそう思うのだった。


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前後半で分けましたけどどうでしたかね。

次はもう少しあっさり目なお話を、次も20時公開です。

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