体育会系の歓迎会に恋人を送りたく無いですよね 前編
「本当に大丈夫?」
「大丈夫だって、知ってる人も何人かいるし、いざとなったらお店だから店員さんもいるし」
「うぅーん、そうなんだけどさぁ、なんか不安なんだよねぇ」
とある有名居酒屋の前に車を停めて車内で話し合っているのはどうやらカップルのようだ、
彼氏の方が新社会人だろうか、会社の飲み会へ行くらしい。
運転席の彼女の方は彼氏より幾つか年上で、ここまで彼氏を送って来たのだが、直前で不安になったらしい。
「アンタ可愛いんだからね、本当に気をつけてよ!」
「はいはい、わかってますよ」
「約束して! 2次会は行かない、変なことされそうになったら、もしくはされたら声を上げる、アタシに連絡する! これ徹底してね!」
「もう学生じゃ無いんだからわかってるよ」
ガチャ、と車の扉を開けて外へ出る。
「待って!」
そんな彼氏を車の窓ガラスを下ろし呼び止める。
「行ってきますのチューして」
「えぇ、ここ外なんだけど、もう、しょうがないなぁ」
ちゅっ、と唇を合わせる、一瞬離してもう一度、今度は舌を入れて濃厚に。
お互いの舌が何度も相手の口内へと行き交う。
続けているとふわふわと妙な感覚になってくる。
1分くらいそうやってると流石に恥ずかしくなってきて唇を離した。
「はい、終わり、行ってくるね」
「むぅ、行ってらっしゃい」
愛の確認が終わると彼氏はお店の方へと歩いて行く。
「ありがとう、愛してるよ」
「アタシも愛してるよ、絶対連絡してね!」
最後に振り返って恥ずかしがりながら愛の確認をもう一度、約束を添えて。
彼氏が店の中に入ったのを確認してエンジンを掛ける、今日も帰ってきたらいっぱい愛し合うのだ、帰ってきた時の彼氏のことを考えて、スポーツドリンクでも買っておいてやろうとドラッグストアに寄って帰るのだった。
「新人! こっちだよ!」
もう既に飲み会は始まっているようだった、自分以外の新卒も何人か居るみたいだ、もちろん男は自分1人だけ。
「すいません、遅れました」
「大丈夫よ、まだ始まって10分も経ってないから、何飲む?」
「じゃあ、レモンサワーをいただきます」
「随分可愛いもの頼むね、イメージ通りだわ」
自分の配属先の先輩に揶揄われながらも、注文を聞いてくれるあたり面倒見は良いのだろう。
注文してからすぐにグラスが運ばれてくる。
「それじゃあ、全員揃ったことだしジョッキ持って!」
「「カンパーイ!」」
先輩の号令で一気に騒がしくなっていく。
「そういえば新人は彼女居るんだっけ?」
「はい、そうですね、大学時代からの付き合いで」
『羨ましいー』『可愛いもんな新人くん』『私の方が金持ってるぞー』
そう言うとあちこちから、ヤジが飛んでくる。
お酒も入っておおらかになっているのだろう、セクハラなんて気にしていないようだ。
「へぇー、じゃあもう童貞じゃないのか」
先輩がそう口にするとみんながお喋りを止めて注目しているようだった。
「いや、実はまだ… へへ」
「えぇ! 勿体無い、なんで? 彼女奥手なの?」
「いや、その僕が初めてはしっかりとお互いが自立できてからにしようって、話してて、それを守ってくれてるんです」
「へぇ、誠実なんだねぇ、彼女さん」
そう言って目を細める彼女は、獲物を見つけたかのように静かに彼を見つめていた。
「すいません、ちょっとお手洗いに」
スマホを手に持ち席を立つ彼の手の中には、彼女からのLINE通知が届いていた、まだ飲み会が始まって30分程しか経っていないが心配して連絡を送っていたのだ。
トイレに入り簡単に連絡を返す。
「また帰る時に連絡入れるね、っと」
そのままポケットにスマホを仕舞い込み席へと戻るのだった。
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長くなったんで前編と後半に分けます。
なんかNTRっぽくなったというか、それなんで純愛が好きな方はご注意ください。
後編は20時ごろ公開しますね。
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