第14話 侵入者 ー 悪名高き極悪ゴブリンギルド⑥
背中の筒からは黒煙が大量に噴出されている。
そしてマシンゴブリンの体内から聞こえる騒がしい駆動音。
一瞬で姿を消したと思いきや、真正面に現れた。
振りかぶり、ガイを斬ろうとする斧の強力な攻撃を本能的な感覚で躱していく。
一瞬でも気を抜けば命を取られる状況。
マシンゴブリンのスピード、そして威力はとどまることを知らない。
体から噴き出す血、無くなっていく剣を握る力。
ガイの限界は近い。
いつまでもこれを続けるわけにはいかなかった。
マシンゴブリンの攻撃は休みなく続く。
何の躊躇いもなく振り下ろされる斧の攻撃を下から斬り上げるように剣で受ける。
ギギギギッ!と剣と斧の軋む音が生まれる。
ガイはすぐさま神器の剣に電気を纏わせ、電流を流す。
しかし、電流が斧を通じてマシンゴブリンの体に流れるが、構うことなく規格外の力で押し込まれる。
あまりの衝撃にガイの踏んでいる地面がグッ!と沈んでいく。
このままじゃ押し斬られる!
そう感じたガイは力勝負を諦めた。
そして上から迫る斧に這わすように剣を滑らせ、マシンゴブリンの勢いを流す。
すると競り合う相手が居なくなったマシンゴブリンは体勢を崩した。
一瞬の隙、ガイはその隙にマシンゴブリンの心臓に向かって高速の突きを放った。
剣聖の放つ剣の突き。
それはどんな物体でも貫くはず、であった。
しかし心臓を狙った突きはマシンゴブリンの鉄の胸部にガン!と弾かれる。
「そんな簡単に破れるわけないだろ?」
マシンゴブリンの心臓を守る左胸部には分厚い鉄板が入っていた。
それも普通の鉄板ではなく特別製の。
しかし、ガイはそんなこと予想できていた。
途端に剣は業火の炎に包まれる。
炎でその鉄板を溶かし、無理やり突き破ろうというガイの魂胆であった。
ゴォォォ!と炎の勢いは今までになく燃え盛っていく。
気づけば炎は2人を包み込む程の勢いであった。
ガイはここで決めてしまおうということだろう。
溶けたマシンゴブリンの胸部に剣先が進んでいく。
しかし、あと少しで奥に到達しそうであった時、
マシンゴブリンの左肩から発射砲が出現し、酸が発射された。
だが完全に戦闘モードで極まっているガイにとって、それを躱すのは容易であった。
首を横にかしげ、間一髪で避ける。
ところがその隙を突かれ、マシンゴブリンの高速の回し蹴りがガイにヒットする。
ガイは咄嗟に防御体勢をとったが、3mを超える巨体から繰り出される蹴りは強力だった。
「あがっ・・・!」
震える手で剣を握ったガイがその場に崩れ落ちていく。
悶絶、目眩、呼吸困難。
「そろそろ終いにするかぁ!?」
マシンゴブリンが今までで最高の速さで迫ってくる。
この怪我で避けるのは不可能であった。
もしかして数秒後には死んでいるかもしれない。
そんな危機的状況において、ガイは笑っていた。
まるで首を斬り落とされた時のマシンゴブリンと同じように。
その姿に驚くマシンゴブリン。
「切り札残してるのがお前だけだと思うなよ」
ガイは迫ってくるマシンゴブリンに呟いた。
「神器解放、20%」
ガイの呟きと同時に神器が白く輝き出した。
そしてマシンゴブリンの迫ってくる斧をいとも簡単にガンッ!と弾き飛ばした。
「なにぃ!?」
驚いているマシンゴブリン。
そこには、白いオーラに身を包むガイがいた。
「最終ラウンド開始だよ」
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