第10話 侵入者 ー 悪名高き極悪ゴブリンギルド②
目の前には100匹のゴブリン。
しかし、ガイの目にその100匹は全く映っていなかった。
気をつけないといけないのはその有象無象の後ろにいる、体の各所が機械で出来た緑の巨体のマシンゴブリンである。
現在、マシンゴブリンを境に左右対称にゴブリンたちは別れている。
マシンゴブリンとガイの間には障害物は何もない。
好機、そう思ったガイは最高速度で動いた。
数十m離れているにも関わらず、瞬く間にマシンゴブリンの前に現れたガイ。
あまりの速さに草原の草でさえ揺れていなかった。
瞬間移動魔法でも使ったのかと思わせる程の、点から点への移動。
その場の誰もガイの超人的な速度を捉えることはできなかった。
そして機械部分の左腕を斬るわけでもなく、その義足で出来た太いを足を斬るでもなく、
できるだけ相手に近づき、下から体を半分に割るように斬り上げた。
まさに一刀両断、とやかく考えずに一撃でこの勝負を決めてしまおうというガイの狙いだった。
しかし、その攻撃はマシンゴブリンの持っている大きな斧で防がれる。
ガキンッ!とガイの剣とマシンゴブリンの斧がぶつかる音が草原に響く。
マシンゴブリンの巨体からすればガイなど容易に突き飛ばせるはずだが、渾身の一撃を放ったガイ、
それも相手が剣聖の場合は両者互角であった。
瞬間、マシンゴブリンの背中の筒から黒煙がシューッ!と勢いよく噴出する。
すると斧のパワーが段違いに上がった。
あまりの勢いにズズッ!とガイが押されていく。
これは力でどうこうできるものじゃない!
そう感じたガイが斧から逃げようとした時、バチバチ!という音と共に斧から電流が放たれた。
まずい!この斧、電流を流せるのか!
ガイがそう理解した時には既に手遅れであった。
「ぐっ!」
途端にガイの体に電流が流れていく。
すぐに全身に痺れが訪れ、体が全く動かなくなる。
剣は握られているが、手が痺れていて操ることは不可能であった。
その時、ガシャン!ガシャン!という音と共に、ガイの目の前で斧が変形し始めた。
そして斧の左右に付いている三日月型の刃が伸び始め、内側に向き始めた。
その中心にはガイ。
左右の刃でガイを挟んで斬ろうとしているのだ。
ガイは感電して動けない状況。
これはやばい!
今まで見たことのない、ガイの焦りの表情。
瞬間、左右の刃がガイに向かって動き始めた。
あと数秒でガイの体は真っ二つにされる。
そんな時、マシンゴブリンはニヤッと笑っていた。
自分の罠に上手く嵌めてやったという風に。
だが、マシンゴブリンは忘れていた。
ガイが握っているのはただの剣ではなく、神器であるということを。
斧の左右の刃が寸前まで迫った時、ガイの握る神器が光り始めた。
瞬く間に辺りを包み込んだその光は何かの前触れであった。
そしてガイを中心に衝撃波を起こしたのだ。
その衝撃でマシンゴブリンは後ろへ吹っ飛ぶ。
ズザザザ!と草原を滑っていく音。
「あっぶね・・・今のはマジで焦ったわ」
ガイはその場に跪いて呟く。
どうやら電流のダメージが残っているようだ。
「お前、やるじゃんよぉ。それが神器の力かぁ?」
衝撃波で飛ばされたマシンゴブリンが歩いてくる。
しかし、ガイにボスゴブリンの言葉など聞こえていなかった。
それよりも浮かぶ考え。
どうやって倒そう。
居合の要領で一瞬で首を刎ねるか、電流に気をつけながら連続で斬りつけるか。
それとも・・・
「ウヒヒヒッ!」
ふとガイが我に返ると、周りは既に100匹のゴブリンに囲まれていた。
ガイの周りを囲むゴブリンたちは不気味に笑っている。
マシンゴブリンはその群れの後ろに立っている。
そして、群れのゴブリンの数匹が襲ってきた。
大量のゴブリン達の数を減らしつつ、マシンゴブリンの倒し方を考えるか。
そう思って襲ってきたゴブリンを軽い気持ちで斬り伏せようとしたガイ。
それは相手がただのゴブリンであるということから来る油断であった。
1匹のゴブリンの棍棒での攻撃が迫っていた。
その攻撃は予想以上に俊敏で、ガイは即座にゴブリンを斬ることを止め刀身で防御することにした。
だが、そこで後ろから別のゴブリンの剣が迫っていることに気づいた。
前と後ろからの素早い攻撃。
ガキンッ!と刀身で両者の攻撃を受け止める。
しかし、それだけで終わりでは無かった。
遠くからガイを弓で狙っていたゴブリンから矢が放たれる。
両手を使っているガイはその矢をしゃがんで躱し、剣に力を込めてゴブリン達を突き放し、
その隙に2体同時に斬りつけた。
倒れる2体のゴブリン。
ガイはあまりの連携、と戦闘能力に驚いていた。
「どうした?俺たちに構ってたらボスに辿り着けないぜぇ?」
マシンゴブリンが挑発してくる。
こいつら、ただの有象無象じゃない。
一人一人に戦いの心得がある。
流石、悪名高い冒険者ギルド。
強靭な肉体に加えて帯電斧を持つマシンゴブリン。
それに加えて武器の心得がある100匹以上のゴブリン。
「こりゃあ、厳しい戦いになるな」
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