第6話 ダンジョン最下層でスローライフ


「あー!忙し忙し!」



 そんな独り言を呟きながらせかせかと走り回る男、ガイ。

先日第8層に現れた冒険者との戦闘で草原は荒れに荒れていた。


 爆発により抉り取られた地面、炎魔法で焼け、折られるように踏まれた草。

ガイは土と植え直す草を用意し、手にはスコップを持ってせっせと草原の修復に向けて動き回っている。


 ガイが住んでいるのは超高難易度ダンジョン。

地上の入り口から下に向かって第1層〜第10層まであり、

逆三角形状で下に行くほど狭くなっていく構造になっている。


 第1層〜第3層は広くて出てくるモンスターもスライムやチビゴブリンばかりで比較的安易に進むことができる。

度胸試しの弱小冒険者などの冷やかしは大抵ここで帰ることが多い。


 しかし、第4層に入ると一気に雰囲気が変わる。

通称「死の4層」


 第3層までとは出現する魔物の強さが段違いであり、

ゴーレム、ガーゴイル、デュラハンなど一般的なダンジョンのボス級モンスターが平然とウヨウヨしている。


 また、迷宮のように入り組んでいる地形も相まって、

うかうかしていると魔物に囲まれて全滅させられる。


 ここを超えられるのは並大抵の冒険者パーティーでは不可能であり、

数々の経験を積んだ冒険者パーティーのみである。


 そして第4層を辛うじて超えたとしても5層、6層と魔物の強さ、難易度共に上がっていく。


 そんな死戦を潜り抜けた者のみが辿り着けるのが第7層。

ここまでこれるのは百戦錬磨のS級冒険者のみ。

第7層はガイの居住エリアへの最後の砦であり、モンスターのレベルが格段に違う。


 女怪メドゥーサや大猿コング、怪獣ベヒーモスなど伝説級の獣たちが待ち受けている。

さらに第7層はそこまで広くないため、冒険者たちは高確率でこの化け物たちと出会うことになる。


 そして第8層〜最深部である第10層がガイの住処。

第8層の入り口付近は一面に草原が広がっており、ガイは侵入者とここで戦闘することが多い。

他にも畑や家畜を飼っているようで、この第8層の手入れがガイの生きがいになっている。


 第9層は物置になっており、大量の金貨や武器、ガイの集めてきたガラクタなどが乱雑に置いてある。

そのせいか侵入者に持っていかれることが多く、ガイは困っている様子。


 そして第10層はガイの居住スペース。

地上の家とさほど変わらない環境であり、快適に生活できる。

さらに一気に地上に出られる隠し通路があり、ガイは主にここから行き来している。

ごく稀にだが、地上でこの通路を見つけた冒険者が入って来ることもある。


 そしてガイはダンジョンのモンスターたちとは仲が良く、

特に第7層のモンスター達は知性がある魔物も多いため、第8層に入ってこないように冒険者を止めるようにお願いしている。



「そういえば久しく上の層に行ってないな。たまには様子も見にいってやらないとな」



そう言いながら雑草をむしっているガイ。



「やっぱり雑草の成長が早いな。日光の魔法が強すぎるのか?」



 ガイの住む第8層〜第10層は知り合いの魔道士に頼んで日光の魔法をかけてもらっており、1日中明るくなっている。

その魔道士は王国の宮廷魔道士で・・・



「ガイさーん!」



噂をすれば現れたようだ。

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