第3話 侵入者 ー 駆け出しS級冒険者パーティー③
拳を振り上げて走ってくる、第8層の綺麗な草原に全く似つかない汚らしい格好の男。
「だ、誰?」
「わからん・・・」
モンスターだと構えたものの走ってきたのが、ただの汚い男で重戦士と魔法使いは拍子抜けしている。
「気を抜くな!」
そんな2人に魔法剣士が喝を入れる。
そして3人の冒険者の前に男が到着する。
「おいコラぁ!ここがどこだかわかってんのかぁ!?」
ガラの悪い態度と表情で威勢よく迫る男。
訳もわからず怒られている冒険者3人は戸惑っている。
怒っている男の見た目は若く、髪は黒髪。
「どこって、超高難易度ダンジョンの第8層だが・・・」
「相手にするな!こいつは人の姿に化けたモンスターだ!」
呑気に質問に答える重戦士に対し、魔法戦士は警戒を解いていない。
「誰がモンスターじゃ!」
ドンドン!と地面を踏みつけて憤怒する男。
「あなた、冒険者じゃないですよね?防具も着てないし武器も持っていないし・・・」
男は鎧を着ておらず、ダンジョンには似つかない寝巻きのような、生地の薄いペラペラの服に身を包んでいる。
どう考えても超高難易度ダンジョンとはかけ離れている。
「お前、モンスターでもなく冒険者でもないなら、何者なんだ?なぜ第8層にいる?」
魔法戦士がいつでも斬りかかれるよう、剣を構えながら問う。
「なんでって・・・俺はこのダンジョンの最深部に住んでるんだよ!」
男の大きな叫びが草原に響く。
怒っている男に対し、3人はポカンとしている。
それも仕方ないことであった。
なぜならここは超高難易度のダンジョンであり、歴戦の冒険者でも手こずるモンスターがウヨウヨといる場所だからである。
下に行けば行くほど強敵が待ち構えている。
そんな超高難易度ダンジョンの最深部に住むなんて全く現実的ではない。
「う、嘘をつくな!そうかわかったぞ!お前、このダンジョンのボスなんだな!?」
魔法剣士は男のめちゃくちゃな発言に惑わされている。
「そうだけどそうじゃねえ!」
男は怒り続けている、冒険者3人と出会った時からずっと。
「っていうかそもそも、第8層はなんでモンスターがいないんですか!?」
魔法使いが男を問い詰める。
「第8層から下のモンスターは全部俺が殺し尽くしたんだよ!俺が平和に住むためにな!」
男が衝撃的なことを口にした。
「駆逐した・・・?ここは超高難易度ダンジョンだぞ、お前みたいな弱そうな男がそんなこと・・・」
ありえない、ありえない、と呟く重戦士。
「俺が殺したんだよ!魔物もボスも全部な!とにかくお前ら帰れ!ここは俺の家!ここは俺の家の庭!」
男はシッシッ!と手でジェスチャーをして3人に帰ることを促している。
超高難易度ダンジョンに住んでいる、魔物は殺し尽くしたなど、男の言葉は3人にとっては到底理解不能であった。
しかし、理解はできなくとも、目的は明確であった。
「ここで帰る訳にはいかない!」
魔法剣士が叫ぶ。
「そ、そうです!私たちは神器を手に入れて帰るんです!」
「お前が何者か知らんが、神器を渡さないなら斬り捨てる!」
魔法剣士に合わせ、男を攻める2人。
話が噛み合わない両者。
そしてジリジリと男に迫る冒険者3人。
「あーもういい!わかったわかった!神器だろ?ほらよ、これがその神器だよ!」
突然、男がポケットから水晶玉のような物を取り出し、ポイッ!と投げた。
魔法剣士が警戒しつつもそれを受け取る。
「こ、これが伝説の神器なのか・・・?」
魔法剣士を中心に重戦士と魔法使いが水晶玉を覗き込む。
一見ただの水晶玉に見える。
その時、水晶玉がキラリと光った。
「まずい!」
何かを感じた魔法剣士が水晶玉を手放そうとしたが間に合わなかった。
そして光と共に水晶玉は割れ始める。
そこで気づく、あの男がいなくなっていることに。
次の瞬間、水晶玉は3人を消し去るような大爆発を起こした。
ダンジョン全体が揺れるような地響きと共に爆風が辺りを包む。
「はい、簡単に騙されるバカ!」
爆発から逃れた男は爆風を背に、元の道に戻って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます