第2話 侵入者 ー 駆け出しS級冒険者パーティー②
階段に身を投げ、ゴロゴロと転げ落ちる3人。
ダンジョンを走り回り、魔物に追いかけられ、肉体的にも精神的にも疲労が溜まっている体にトドメの一撃が襲う。
階段に体を打ち付けられ意識が朦朧とする中、ドン!と地面に到達する感覚。
「がっ・・・!」
半ば呼吸困難のような状態で動くことができず地面に伏す3人。
そんな中、感じたのはダンジョンに似合わない草と土の優しい香り。
その香りに誘われるように顔を上げると、そこには一面に草原が広がっていた。
超高難易度ダンジョン 第8層
短い黄緑色の草が見渡す限り広がっている。
3人はその壮観な風景を前に地面に座り込み、ここが危険なダンジョンであることを忘れて虜になっていた。
「な、なあ・・・もしかしてここって・・・」
ゆっくり、噛み締めるように魔法剣士が呟く。
「ここは絶対第8層だ!」
「ですよね!やった・・・やったぁ!」
重戦士と魔法使いは武器をしまい、無邪気に喜んでいる。
その姿を目にし、ずっと険しい顔をしていた魔法剣士にもようやく笑顔が見えた。
「でもなんでこんな草原があるんだ?ここはダンジョンの中だよな?」
魔法剣士の言葉でふと現実に戻り、自分たちが転がり落ちてきた階段を振り返る。
美しい草原とは対照的な、灰色で無機質な階段。
その相反する光景に不気味さを覚える。
そして階段の上からは自分たちを追いかけていた第7層のモンスターたちの気配を感じる。
しかし、第8層に降りて来る様子はない。
「おかしいな・・・」
「確かにおかしい。普通なら追いかけてくるはずだが」
重戦士と魔法剣士の顔がみるみる曇っていく。
「まあいいじゃないですか!とにかく進みましょうよ〜!」
第7層での狂乱が嘘のように浮かれた様子で話す魔法使い。
「・・・そうだな。よし、第9層への入り口を探そう!」
魔法使いのポジティブな言動に釣られ、3人は草原の中を歩き出した。
草原は枯れ草や長く伸びた草は無く、不思議なぐらい綺麗に手入れされていた。
違和感を感じざるを得なかった。
「やっぱりおかしい」
「ああ、普通じゃない。何かいる」
重戦士と魔法剣士の2人が冷静に言った。
その時、平和な草原にドタドタと音が響き渡った。
「何か来るぞ!構えろ!」
魔法剣士の言葉に従い、重戦士、魔法使い共に戦闘態勢に入る。
3人は今までにない恐怖でいっぱいだった。
先ほどの第7層であれだけ恐ろしい魔物たちなら、
この第8層はどれほどの化け物が待ち構えているのか。
「こらぁぁー!」
草原の向こうから、こだまするように叫び声が聞こえ、何かがどんどんとこちらに向かって来る。
途端に3人の武器を握る力が強くなる。
しかし3人はここで気づく。
人の声?
「てめぇら!人の家に勝手に入るなぁ!」
叫び声と共に怒った様子で拳を振りかざし、こちらに走ってきたのは、
ボサボサの髪にヨレヨレの服を着た汚い男だった。
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