第27話 運命
「お父さーん、お父さん。」
と、吾輩の事をお父さんと呼ぶ少女がいきなり前に現れ吾輩の肩を揺らしていた。
「お前…何者だ?」
吾輩は少女から距離を取る。
「私はね。テュファン、未来からお父さんを助けに来たんだ」
「お前は一体何を言って…?」
言葉の途中で周りの違和感に気が付く。
「どうして、他の奴らが止まっているんだ?」
周りの人間も空を飛んでいる鳥もすべてが止まっている。
「まぁ、そうなるよね。じゃあ、一から説明させてもらうよ」
「私はね、『時間操作』と『異空間移動』の加護も持ってるの」
「それって…」
「そう私はお父さんと同じ二つの加護を持ってる」
「何故二つ加護を持ってるんだ?」
「それは…言っちゃうと未来が変わっちゃうから今は言えない」
「そうか、ならやめておこう。じゃあ、早速だがお前は何者なんだ」
「だから、未来からお父さんを助けに来た。テュフォンだよ。お父さんが死のうとしているから止めに来たんだよ」
…正直信じられないが。ほとんどの人間に行ったことのない吾輩が死のうとしているという事を知っている人間。信じるなというほうが無理だな。
「じゃあ、お前は吾輩の事を説得しに来たのか?」
「うーん、説得しに来たのは事実だけど、ちょっと違うかな。私は見せに来たんだよね」
「何をだ」
「未来を私のもう一つの加護『異空間移動』を使ってね。この加護はねこの先起こるもしもの世界を少しだけ見るの。それと『時間操作』を組み合わせて少ししか見れない未来を長く見る。これなら、お父さんの死ぬ気が無くなると思う」
「そうか、ならやってみてくれ」
「もちろん」
と吾輩の肩に触れる。正直、あまり信じれないが…。と思っていたが少女を中心に景色が歪む。
「今から二つの未来を見てもらうから。さぁ、行くよ。離れないでね」
景色が暗くなり、徐々に明るくなる。
「…あれは」
「お父さんと『封印』の子だね。ちょうどお父さんに触れたみたいだ」
吾輩の加護が封印された。さて、どうなるか。
「さて、これでお前自慢の加護は無くなった訳だ。これで、お前を殺すことが出来るだろ」
ローファは手を前に出す。恐らく『電光砲』か。そして、吾輩の体を打ち抜いた。
「ハッハー、いい気分だぜ」
あぁ、ようやく死…ねない。傷の治りがいつもより遅いが…着実に治っている。まさか…。
「く、そが。1つしか、封印できないの、かよ」
「えっ?なんで『封印』したはずなのに…」
赤髪の少女が目を見開く
「吾輩は二つの加護持ちだ。1つは『超回復』そしてもう一つは『不老不死』。お前は『超回復』の方を『封印』したんだろ?はぁ、今までが無駄になった」
もういいやどうでも
「なんだよ、それ。チッ、化け物が‼」
これが『封印』された未来か
「どう?これが未来だけど。結果的に死ぬことは出来なかった。そして、お父さんはこの場にいる人間を殺害し姿をくらます。もちろんだけど、メイさんさえもね」
「もう一つの未来は何なんだ?」
「もう一つは『不老不死』が『封印』された未来。傷を負いながらあのローファとかいう男に勝った。だけど、『超回復』のデメリット、老化で死ぬ未来だね」
「じゃあ…」
その未来でいいじゃないかと言おうとした時。パチンッ‼と吾輩はティフォンに叩かれた。
「メイさんの事を考えたの?」
「…何があった?」
「メイさんはお父さんの死を見送った後、自ら命を絶った。何故かは…分からない。でも、私はお父さんに自殺するのに他の人を巻き込むのか聞きたいの」
「それは…」
確かにあまり快いものではない。今まで他人の死には無関心だったが…メイは違うな。巻き込むべきではない。
「確かにそうだな。人を巻き込むわけにはいかない」
「そうだよね。うん、お父さんはそうでないと。じゃあ、どうするの?」
「『封印』されずにローファを叩きのめす」
「うん。じゃあ、『封印』の子は私に任せて」
そう言うと景色が再び歪んだ。
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