第14話 鬼

鬼は初めてみた。ドラゴンよりも小さくゴブリンキングよりでかい、こんな分かりにくい例えをしても意味がないな。まぁ、普通の人間より一回り二回りどころか五回りくらいでかいと言えば伝わるだろうか?

吾輩が近づくと鬼が吾輩の方を向き

「ミ、、、」

「?」

何か喋ろうとしている。というか鬼って喋れるのか?

「ミツ、、、ケ、タ」

見つけた?吾輩の事を探していたのだろうか?しかし、吾輩に鬼の知り合いなんていないしな、、、とここまで考えたところで鬼が吾輩の事を掴んだ。ミシミシと骨の軋む音、メイの『神の手』よりも掴む力が強い気がす、、、違うな。吾輩の力が抜けていってる段々腕に力が入らなくなっていく。

「オ、マエダ、ケハ」

鬼の握る力も強くなり吾輩の意識がどんどん遠くなってい、、、かない。しかも、ある程度力が抜けたところで一気に力が戻った。正確には再生した。

「はぁ。また、駄目だったか」

正直初めての感覚だったので期待したのだが無駄だった。

「ナン、デダ?」

鬼は更に強く握る。しかし、力が戻って改めて握られるとわかる、メイの『神の手』よりも確かに力は強いが握りが甘すぎる。そのため、メイより脱出しやすい。

「もういいよ。お前」

そう言うと吾輩は鬼の手から無理矢理脱出した。

「ナゼ、ウゴケ、ル?」

「?、、、あぁ。なるほどお前が例の犯人か」

確かに握られれば力が抜けていき意識を失う。一度捕まれば普通の人間ならまず逃げられない。

「そっかそっか」

吾輩は鬼に背を向けた。理由?興味を失ったからだ。吾輩を殺すことが出来るかもしれない、と探していたのに殺せないとわかったのだから当然だろう?

「マ、テ‼︎」

おっと、決着ぐらいは着けとかないと

鬼のパンチを避け一発顔に蹴りを入れる。鬼は後ろに倒れ、起き上がったときには吾輩はもうそこにはいなかった。

翌朝

吾輩は今日も今日とて封印の加護探し、メイや周りの生徒が話している事を盗み聞きしたりあとはクラス単位で誰がどんな加護を持っているかを毎日一人一人調べたりしている。しかし、やはり1日に10人を調べるのがやっとで本当に気長な作業である。そして、メイは相変わらず暴行事件の犯人を探していた。逆に言うとそれぐらいしか大きな事件がないので平和な学園だと思う。

いつも通りメイが朝、吾輩に話をするが、いつも以上に聞いてない事がわかったのか

「ねぇ、アリアンテ君聞いてる?」

と聞いてくる。吾輩は適当に

「ああ。聞いてるぞ」

と答えた。すると、

「じゃあ、僕なんて言ったと思う?」

「今日、購買に行ったら珍しいパンがあった話だろう?」

「それも言ったけど一個前の会話じゃん」

「そうだったか?」

「そうだよ。もう一度言うよ?」

「ああ」

メイは少し間を開け

「昨日大きな怪物の目撃情報があったんだ。大きさは5メートルくらいの筋肉の塊が動いてるってね」

「へぇー」

「例の事件と関係あると思う?」

「へぇー」

「全然聞いてないじゃん」

「あ。そう言えば」

「そう言えばじゃな、、、」

「昨日鬼を見たぞ」

「何それ詳しく」

怒ったり真面目になったりと感情が忙しいメイであった。

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