第3話 書籍化作業は長丁場2

 さて、具体的な改稿作業の話をしましょうか。加筆修正する前に体裁面を整える必要があります。書籍は縦書きです。ですから数字はアラビア数字ではなく、漢数字に直さなくてはなりません。それがね、一杯あるんですよ、アラビア数字。物の値段とか距離とか。それと拙作はダンジョンものなので、第1層とか出てくるんです。


 こんなものをいちいち手作業で直していたら大変です。置換機能を使って一気に修正しました。普段パソコンを使わないと知らない人もいるかもしれませんね。この機能はCtrlキーとFの同時押しで使えます。これが使えないと漢数字にするだけで嫌になったかもしれません。


 それから、章の区切れも意識して位置の調整を行います。章の最後に数文字はみ出したら、残り十数行を空白のままにすることになります。加筆のボリュームに影響するので意外と侮れません。44文字19行の体裁なので1ページ増減するだけで800文字も変わります。仮に15章あると1万2千字。結構大きいでしょう?


 加筆作業自体は全然苦労しませんでした。画面が小さいので目がショボショボしたくらいです。指定された期限までにきちんと仕上げて送ることができました。このとき以降も期限は厳守しています。夏休みの宿題を9月にやっていた人物とは思えない品行方正ぶりです。


 この辺りは仕事をしていた影響が大きいと思います。基本的に仕事だといくらクオリティが高くても期限を過ぎたら意味がありません。自分よりも後工程に迷惑をかけることになってしまいます。明日の100点より今日の60点。まあ、期限内で60点を70点にする努力はすべきでしょうが。だいたい、ここまでで2か月かかりました。


 これから編集さんと2回原稿のやり取りをします。内容面では大きな修正はなかったように記憶していますが、表現面ではいくつか指摘がありました。出版社ごとにNGワードというものがあります。社会通念上差別を含んでいるという言葉は言い換えが必要でした。ぴったりくる言い換えの言葉が無いとちょっと苦労します。


 そのやりとりと同時にイラストについて、どのシーンを使うかの検討が始まりました。書籍内でイラストの位置が近くなりすぎないようにしつつ、見せ場となるところの提案を頂きます。それに対し、対案を出したり、描き起こすに当たっての留意点をお伝えしたりしました。


 改稿について編集部さんの了解が得られると、いよいよ校正さんに原稿が回ります。文字の誤りだけでなく、表記ゆれや前後の矛盾なども含めて厳しくチェックされ指摘が入ったものが送られてくることになりました。このとき、紙と電子データのどちらで受領するか聞かれて新巻はエコだしなと思って電子を選択します。


 校正原稿はpdfファイルで送られてきました。それこそ山のような書き込みがあって眩暈がします。まあ、全部が間違いの指摘というわけでなく確認をしているだけのこともあるんですけどね。1つ1つにコメント機能を使って返信をしていきました。そして出来上がったのが15メガバイトほどの巨大容量ファイルです。もちろん容量が大きすぎてメールでは送れません。


 ここで役に立ったのがグーグルのアカウント。グーグルドライブの機能を使って編集さんとファイル共有をします。若い方ならなんともないことでしょうが、おっさんにはちょっと難しい。仕事で使った経験が役に立ちました。初校に対して回答作業をしているところに出版権設定契約の確認も依頼されます。


 2回目の校正を行った再校を受領して、初校と同様の作業を行いました。これがラストチャンスなので冒頭から再度全体の確認作業もします。どうしても気になるところがあり今さらながらですが変更をお願いしました。書き込みをしたファイルを再び共有し、最終的に校了のご連絡を頂いて全作業が終了です。


 本編以外には書店や読者向けの特典ショートストーリーを書きおろしたり、著者欄に掲載するプロフィールを書いたりもしました。もうちょっと真面目にペンネームを付けておけば良かったかなとちょっと反省をしたのもこの頃です。圧倒的に遅いですね。「新巻」はともかく、なんだよ「へもん」って。まあ、結果的にネット検索において他のものと混同されないで済んでいるのは良かったかなと今では思っています。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る