002-6 桧山 弥咲
「もうちょっと待っててね~、すぐにできるから~」
「は~い……」
収穫された根野菜の入っていたプランター内の土を
「しかし、意外と慣れるものなんだなぁ……」
オーナーに拾われる前は、昼勤の生活を送っていた。
一時的なものだと、いつかは
すでに……
「ごちそうさま」
「はい、おそまつさま」
下着エプロン姿の桧山が先回りして用意した
「いつも思うけどさ……」
「な~に~……」
食後のお茶を一口飲み、抽冬は続けた。
「……なんで俺なわけ? もうちょいましな男なんて、他にいくらでもいるでしょう?」
「なんとなくで人生削ってた女には、丁度いいと思うけど?」
それに、と桧山は流し台の水道を止めると、自らのショートボブを揺らしながら抽冬の前に立った。
「
「何のことやら……」
抽冬は溜息を一つ吐くと、静かに横を向いた。しかし、桧山の推測は当たっている。
もう行く当てのない彼女の為に
偶々、桧山の元彼連中を潰して稼げる方法を教わったから、それを実行しただけに過ぎない。元金と
だから抽冬は実行して、ちょっとした臨時収入を得た。目の前にいる彼女が『桧山弥咲』になったのは、ただのついでに過ぎない。
抽冬が恩着せがましくしないのも、それが一番の理由だった。
しかし、抽冬がそう考えていたとしても、桧山が同じように考えているとは限らない。
「そんな性格だからあなた、結構モテてるでしょう……気付いていないの?」
「俺って、モテてるのかなぁ……」
たしかに、女性の知り合いは多いが……元は仕事の付き合いが多い。その延長で知人・友人になる程度であれば、誰でもできるのではないかと、抽冬は考えていた。
しかし、桧山は抽冬の鼻先に人差し指を押し当て、共に言い放った。
「じゃなきゃ……バツイチの元AV女優が、こんなに必死になって、あなたを口説こうとはしないわよ」
指で押され、揺れた頭を自身で軽く動かしてから、抽冬は頭を掻きつつ立ち上がった。
「まあ……好きにしてくれ」
「最初からそうしてるじゃない」
このまま襲ってやろうかと、指をワキワキさせている桧山を押し退け、抽冬は家庭菜園部屋に入った。
「収穫したら、もう
「……行ってらっしゃい」
少し憮然とする桧山に、ふと抽冬は気になったことを聞いてみた。
「そういえば……なんで俺が、元彼連中潰したと思ってるの?」
「そのアイディアを出してくれた人から聞いたのよ。前にお店を手伝った時に」
……ちなみにそれが、桧山がパート勤めに甘んじている理由だったりする。
「だから言い逃れはできないわよ?」
「…………」
なので抽冬は、口を堅く閉ざすことにした。
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