第16話 迷宮の終点
「売れば一生遊んで暮らせるくらいの額はもらえそうね」
「なんだ魔石か・・・前はスキルオーブが出たんだけどな」
「そんな簡単にスキルオーブがドロップするはずないでしょう?前は運が良かっただけよ」
「そうなんですか?茜さんはどうやって手に入れてるんですか?」
「私は中階層で魔物を倒した時にドロップしたわね。それも一回だけだったしかなり運が良かったと思うわ。後は深階層で一回と、オークションで競り落としたのが一回ね」
「スキルオーブを入手するのって難しい事なんですね…」
「噂なんだけど、スキルオーブって探索者としての才能がある人にしかドロップしないって噂があるのよ。研究者が正式に公表したわけじゃないから信憑性はないんだけどね」
「都市伝説って奴ですね」
茜が言った事は噂ではあるのだが、以前、オークションでスキルオーブを大量に買い漁った大富豪の探索者が存在した。その探索者は大量のスキルを保持しながら結局、特級探索者はおろか上位探索者にすらなれずに迷宮で亡くなったのだ。
その事からスキルオーブが探索者を選んでるという噂が流れ始めたのだが、実際の所は謎のままである。
「琉偉。ドラゴンが出たという事は、他の迷宮と同じならここから先は人類が初めて踏み入れる領域よ。今までより気を引き締めていきましょう」
「そうですね。俺が初めてか・・・ここから先はどうなってるんだろう。楽しみだ」
「本当に私の話を聞いていたのかしら…」
茜の言葉を琉偉はしっかりと聞いていたのだが、それよりもここからは人類未踏の地という事もあり、本心が思わず出てしまっていた。
ここから先は、茜ですら踏み入った事の無い領域。どんな魔物がでてくるかは分からない。普通ならば慎重に進むところなのだろうが、残念ながら琉偉は普通ではない。
今までと変わらないペースで迷宮の奥に進んで行く。そんな琉偉に小さくため息をつきながらも何も言わずに茜も付いて行く。今の琉偉に何を言っても無駄だと感じたからだろう。
「流石に、深階層の奥というだけあって竜種がかなり多いわね・・・琉偉と一緒じゃなきゃこんな場所来たくないわ」
「そうですか?茜さんも本気を出せばドラゴン位倒せるでしょう?」
「私が使う技は燃費が悪いのよ。倒せはするかもしれないけど、一回打ったら動けなくなるもの。それとも私を介抱しながら進むつもり?」
「それは…遠慮しときます」
「全く…素直過ぎるのも考え物ね。こんな美人が倒れたら男ならほっとけないのが普通でしょ?」
「美人とか自分で言うことですか?」
「…琉偉。あなたとの無駄話をするのも楽しいのだけど、どうやら終点のようだわ」
茜が視線を向けている方を見ると、道が途切れている。パッと見では分からないが、
「空間が歪んでいる…?」
「そうね。道はこの一本だけだったし…どうする?一回戻ろうか?」
「そんな選択肢は俺にはないですよ。道がこれ以上ないのなら、あそこに入るしかないですよ」
「はぁ…分かってはいたけど、琉偉は進むわよね。分かったわ。先に進みましょう」
琉偉に戻るという選択肢は当然ない。歪んだ空間に落ちている石を投げてみると、普通なら壁に当たって音がするはずだが音はしなかった。
恐らく何処かの空間に繋がっているのだろうが、琉偉は戸惑う事なく中に入って行く。すると、琉偉の姿は消えてしまった。
「琉偉ッ!?」
「茜さんッ!!凄い光景ですよ!?来てください!」
歪んだ空間から琉偉の顔だけ出ている光景は、かなり奇妙だが茜は恐る恐る空間を潜ると‥‥‥
「城…?」
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