第14話 初めての海外
琉偉が特級探索者の茜の弟子になって三年。18歳になった琉偉は今日高校を卒業し、本格的にプロとして探索者の道を歩み始めることになる。
以前よりも少し大人びた琉偉ではあったが、迷宮以外の事にはまるで興味がなく、現在目の前で琉偉に告白している女生徒に対しても無関心な様子だ。
「琉偉さん。あの、前から好きでしたッ!付き合ってください!」
「ごめん。そういうの興味ないから。それだけなら俺はもう行くから」
勇気を振り絞って女生徒は告白をしたのだが、琉偉は興味を持つことはなかった。実を言うと、琉偉は以前から女生徒から人気があり、こういう事は何度かあったのだが全て断っていた。
そんな時一台の高級車が、けたたましいブレーキ音を響かせながら校門に止まる。
「おー少年よ青春してるわね。私にもこんな時があったわ…」
「茜さんは昔の事過ぎてもう覚えてないんじゃないですか?」
「はぁ…可愛かった時の琉偉は何処に行っちゃったのかしら。こんなに生意気になっちゃって」
茜とももう三年の付き合いだ。こんな軽口を言い合える仲にはなっていた。
「そんな事より早く行くわよ。飛行機の時間に間に合わなくなっちゃうわ」
「俺のせいにしないで下さいよ。大体、茜さんが時間に遅れるからギリギリになったんでしょうが」
琉偉はこれから、西アフリカの大氾濫が起きた国に向かう。
以前から協会は散々特級探索者の茜に対し、要請をしていたにも関わらず、今の今まで無視を貫いてきたのだ。
それは、琉偉の事を鍛えるという事も理由にはあるのだが、本当の理由は面倒だからだ。
そんな茜が何故、協会の要請に今更になってから行く気になったかというと、琉偉の実力が控えめに言っても、世界的に見てもトップクラスになっている事と、高校を卒業し琉偉を自由に海外に連れて行けるようになったからである。
「ギリギリでしたね…」
「ちょっと、私のせいだって言うの?昨日ちょっと飲み過ぎて寝坊しただけじゃない」
「それって、言い訳してるつもりですか?」
そんな他愛もない話をしているうちに、飛行機は上空に飛び立っていく。現地に着くには飛行機の乗り継ぎと陸路での移動も含み25時間ほどかかる。
長い旅になりそうだが、琉偉は初めての海外の迷宮に潜る事を非常に楽しみにしていた。
ようやく現地に着いた時には、夜になっており近くのホテルで一泊した後に、一度協会本部に向かう事にした。
翌朝に協会本部に行き協会の職員に現在の状況を聞くと、大氾濫が起きてから三年でようやく、国中に散らばった魔物達のほとんどを殲滅できたようだ。
ほとんどという事はまだ魔物が地上に居るという事なのだが、それは未だ迷宮からは小規模ながら氾濫が起きているからである。
各国から応援に駆け付けた探索者により、迷宮の周りを包囲し国中に広がるのを防ぐのが精いっぱいのようで、迷宮内部には突入出来ていないのが現在の状況の様だ。
本来なら迷宮内部でしか、異能やスキルを使用する事が出来ないはずなのだが、魔物が溢れたせいなのか、大氾濫が起きた国だけはそれらが使えるようになっていた。
研究者も調べてはいるものの、ハッキリとした事は分かっていなかった。
「以前より大分マシになったようね。じゃあ現状も確認できた事だし、早速迷宮の中に向かいましょうか」
「ようやくですか…もう本気で暴れて良いんですよね?」
「勿論よ。さっさと終わらせて帰りましょうか」
その言葉を聞いて、現地に派遣されている日本の協会職員は戸惑う。
「あの、私の話を聞いてましたか?迷宮の中に入るには小規模とは言え、深階層に出現する魔物を突破していかないと無理なんですよ?それを特級探索者とはいえ自殺行為ですよ。それにもう一人はまだ子供じゃないですか」
「少し訂正するわ。私はこの子のサポートをするだけで、他には何もするつもりはないわ」
呆気に取られる協会職員を置いて、二人は最前線に向かっていく。
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