第6話 捜索隊結成
階層変化という前代未聞の事件が発生してから3日。協会には四六時中クレームや問い合わせの電話が鳴り響き、協会上層部は火消しの為に慌ただしい状況が続いていた。
会見をした後に何処から情報が漏れたのか、迷宮内部にまだ取り残されている少年が居るとネット上に挙がったからだ。
実の所、協会上層部は救助隊により、死者は出たものの取り残された者は居ないと会見で言ってしまっていた。
指揮をとった美優の話を碌に聞かずに会見を開いてしまった事が原因なのであるが、美優に話を聞こうにも救助活動が終了した際に、勝手に指揮を取り上位探索者まで被害を拡大させた、という理由で主任降格と三か月の停職処分を言い渡していた。
自分たちの事を棚に上げて、美優一人に責任を押し付けてこの事態を乗り切ろうとしたのだから自業自得なのだが…。
そんな慌ただしい状況の中、ようやく迷宮から断続的に鳴り響いていた音が止まり、上位探索者である秋斗を中心にして捜索隊が迷宮内部に突入しようとしていた。その中には仁の姿もある。
「先日に続き、今日も集まってもらってすまない。皆も知っている通り、迷宮の中には俺の息子が取り残されている。俺はまだ生き残っていると信じている…すまないが皆の力を貸してくれッ!」
20人を超える上位探索者が集まったのは、琉偉の身を心配しているという事は勿論の事、秋斗の人柄によるものが大きいだろう。今回は上位探索者と例外として仁の姿もあるが、他の大勢の探索者からは捜索隊に志願の声が挙がっていた。
しかし、迷宮の内部は中層以上の魔物が出現する為、ありがたいと思いつつも上位探索者以外は断っていた。
秋斗と仁以外の捜索隊の面々は、もはや琉偉が生きているとは思っていなかった。ただ、琉偉の亡骸を見つけてあげたい、そういう想いで捜索に臨んでいた。
迷宮内部に捜索隊が突入するも、中層以上の魔物が断続的に襲い掛かってくる為、中々奥に進むことが出来ないでいた。
「仁、ペースを上げ過ぎだ。気持ちは俺も分かるが、もう少しペースを落とさないと疲れて無駄なミスをするぞ」
「…はい」
遅々として進まない事に仁は焦っていた、ただでさえ三日も経過しているのだ。琉偉の生存は限りなく絶望的…そんな考えが頭に浮かんでしまうのが嫌で、無意識にペースを上げ過ぎていた。
仁は一旦後方まで下がり、自分に言い聞かせる。
「俺が信じないでどうするんだよ…琉偉は絶対に生きている」
捜索は朝から始まり、未だ琉偉の事を発見することが出来ずに、既に8時間が経過。
上位探索者と言えども、度重なる戦闘により疲労が蓄積し、ケガをする者が続出し始めている。秋斗も捜索隊のリーダーを任されてる身である。苦渋の決断だが、これ以上の捜索は危険と判断し帰還することを告げる。
「これ以上の捜索は危険だ。一度帰還する事にする」
「待ってください秋斗さんッ!!まだ琉偉が見つかってないんですよ!?もう少しだけ…後、もう少しだけでいいんです!!」
秋斗も仁と同じ気持ちだ。たった一人の息子なのだ…見つけ出すまで捜索したい。そう思ってはいるが皆をこれ以上危険にするわけにはいかない。
秋斗は仁にどういうべきか迷っていると、迷宮の奥から戦闘音の様なものが微かに聞こえてくる。
「琉偉ッ!!」
「仁ッ!!待てッ!!」
秋斗の制止を振り切り、仁は音の方に向かって走っていく。仁の事を追いかけないわけにもいかないので、捜索隊は音がする方に向かって行く。
音がする場所に着くと仁は一瞬驚き固まってしまった。
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