第5話 スキルオーブ
階層変化は日本だけではなく世界的なニュースになり、世界初の階層変化は世界に衝撃を与えた。世界中が大きく取り上げる中、当事国である日本ではニュースで報じてはいるものの、何故かそこまで大きくは扱われていない。
実の所、今までは問題が起きるたびに、金の力で大手メディアに働きかけて、記事を出さないようにさせてきたが、今回の事件は事が事であるため協会は会見せざるを得なくなる。
しかたなく会見を開き、今回の事は協会の落ち度ではなく不測の事態による事故だと説明した。そんな説明で、世間や遺族たちは到底納得できるわけがない。
協会は日本の政治家による天下り先の1つでもあり、以前から問題視されていたが、メディアは取り上げる事は無かった。「火のない所に煙は立たぬ」という言葉がある通り、証拠はないが色々と協会は黒い噂がいくつもあった。
そのような事もあり、会見で協会の上層部が「今回の事故は協会の責任ではない」という言葉が世間から厳しく非難されたのであった。
これにより協会への風当たりはさらに強まっていくのである。
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「スキルオーブ…?」
異能が開花した事に気を取られていて、ドラゴンの事をすっかり忘れていた琉偉は、ようやくドロップした物に気付く。
『スキルオーブ』は迷宮から極稀に出現する貴重なアイテムであり、使用すると様々な恩恵が受けられる。魔法を使えたり、身体能力が大幅に上がる等、様々な効果を得る事が出来る。
未だこのスキルオーブは謎が多いままで、一説では探索者が魔物を倒しドロップしたスキルオーブは、足りない能力を補うスキルオーブが出現することが多いらしい。
そのような事もあり、一般人では到底変えない様な高額な値段で取引されている。
琉偉も話には聞いたことはあるが、実際に目にするのは初めてであるので、恐る恐るスキルオーブを手に取って見ると、次の様な言葉が頭に浮かんできた。
スキル『
・使用者のデメリットを帳消しにし、困難を克服する度に身体能力が上昇する。使用しますか?<はい・いいえ>
「このスキルオーブは俺の為にあるようなもんだな…勿論使用する」
琉偉が使用すると、スキルオーブが一瞬激しく光ったかと思うと手から消えていた。
「初めて使ったけどなんだか実感が湧かないな…」
異能を開花させスキルオーブも使用した自分の身体能力が、何処まで上がったか確かめるために軽く動いてみる。
「なんだこれ…今までと全然ちがうッ!!」
異能を開花させる前の琉偉の身体能力は、ほとんど一般人と変わらない程度であったが、開花させた後は自分の身体が羽のように軽く、以前までの自分とは大違いであった。
異能を開花した者の多くは、急激な身体能力の上昇により身体が上手く動かせない事が多い。当然、琉偉も同じで動き回り、飛び跳ねたりはしているものの、半分の力も出してはいない状態である。
「異能を開花してぶっつけ本番でよくドラゴンなんか倒せたよな…。暫く身体を慣らさないと迷宮から脱出なんて出来ないな」
琉偉はこの時は知らなかったが、階層変化により周囲の魔物は中階層以上に出現する魔物がうようよといる状態だ。
無理に迷宮から脱出しようとせずに、救助隊を待ちつつ身体を慣らすといった選択をしたのは良い判断だったといえよう。
身体を迷宮で慣らし続ける事二日。持っていた携帯食料も無くなり、ある程度身体が慣れて来たこともあり、琉偉は脱出を決行するのであった。
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