第26話
看護師に聞いてみた。
わたし、ハタチですよね、と。
そうよ、と。
だから、聞いてみた。
18歳以上は、違う階層に行くのではないか、と。
看護師は、困った。答えは……。
カルテでは20歳だった。
しかし、なぜかわたしはここにいた。子供達の中二病患者たちのなかで。
時間を奪われると、何が起こるのだろう。
人々の認識もぼやけるのだろうか?
わたしはいま、いくつなのか。心は、いつもぼんやりと本を読んできた。
16歳、太宰治の人間失格を読んでひどく共感した気がする。砂を噛むようなご飯だとか。それでも、今読み返したら。わたしはきっと。
人間である。
失格ではない。
どうして、いままで外出許可も無しに中庭や離れの鐘楼の塔、親友の見送りに行けたのか。アリアちゃんが毎回手続きしてくれたのだろう。でも。
かすかな、れいこん。
わたしこそが、足のついていない、髪を風に不気味になびかせた、うらめしい思いの塊なのかもしれない。
手紙を書こうと思った。わたしが生きている印。なんでもない人への、ファンレター。アリアちゃんはどこへ行ったろう。宵くんには関わってはいけないだろうか。
外出申請?
「看護師さん。わたしは、外出届を出せば、外出できるのですか?」
「症状がよくなったらね」
一生出られない。なぜなら、自分に特別な力があると信じているから。
ならば、そうだ。
「わたしには、なんの力もありません。ひとは、ただのひとです。どうか、外出だけでもさせてください」
医療従事者の顔つきが、ぽけっとしたものに変わり、真剣なものになった。
「カウンセリングを予約しますか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます