第16話

「そう。だから私は。いつかマリアがみんなの中二病を治してくれる女神だと思ってた」

勝手に神聖視していた。

「ごめんなさい」

私が謝り。

整った顔の衣宵はなぜこんなことが起きるのかという顔をしてから。妙に艶めいた声で幽霊の出る桜の木に問いかける。

「あなたが僕の母なら、いつから僕の母なんだ」

いつからいてくれたのか。いついなくなったのか。いつ産んでくれたのか。

聞きたいことは山ほどある。

「里親先から逃げて、氷の雨の中裸足で馬鹿のように歩いて、気がついた、あるいは気を失ったらこの木の根元にいたらしい」

艶っぽく聞こえるのは、涙を流していいのかわからないから。なんの感情だかわからないから。

ただ一つ。この幽霊の出る木のマリアは。

調べてみたら衣宵の母の可能性が高かった。

桜の木が、全体で言う。

〈お母さんも昔、中二病だったの〉

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