第12話
「いよいくん。すきな音楽家とか、音楽家じゃわからないな。好きな、ミュージシャンはいるの?」
私は、自らの手で真冬の氷の冷たい雨から、死体を盗み出すようにして病棟へと運んだ記憶を思い出す。すると衣宵は
「宇多田ヒカルさん。あと、坂本真綾さんという、声優さんの顔が好きです。歌はあまり知らない。」
こんな調子なのだ。
あれからホールに戻ると、桜人兼中二病患者達が職員が遠ざけるのも気にせず。
「君がいなきゃダメなんだ!」とひたすら自分の使いたい能力の幻影発現を愉しんでいた。
風は吹かなかった。ただ、肌にごうっ、と突風の抜けるような感覚が皮膚なのか、目なのかに当たるような幻の感覚。炎は色が様々で、ガスコンロの火のように色をグラデーションさせる幻もあり。読心の能力は発言しない。
衣宵がいない間にみんな、気になって念じてみたらしいが。
発現条件は。
衣宵と名付けられた少年が近くにいるかどうか。
しかし、問題が浮上した。能力を披露するうちに、『個性』が消えたのである。みんながみんな、自身の能力に固執していたが、真似してみるとただはしゃぎ。毎日がお祭り。しかし、飽きてくる。
衣宵は食事を取らなくなっていった。
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