第9話

 豪奢な、という言葉ある。ごうしゃ。どういう時に使うのか。荘厳。これは、厳かで、こう、広々と奥行きのある重さ。

 しかし、桜人の〈司令塔〉たる〈執務室〉のあるじ、アリアの部屋は。

 ガラス細工のチェス盤。大層古めかしい、まだソビエト連邦の地球儀。読めはしないが外国語で書かれた分厚い書籍の収まった一面の本棚。この世の、こんなアンティークな隠れ家が欲しい!という願いを集めたような場所だ。机の上には、蝋の棒と、手紙。そして、火を灯す小さき暖炉のようなモノ。

 火。火炎。

 まさか、わたしが水責めならぬお湯責めをしたからって、炎とは。炎重も感激したいような、幻なので何度か試しても熱くないそれに困惑していた。他の者まで、自分の能力を宣言したら可能な限り発現できたのである。

 この事態、アリちゃんなら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る