第8話

 誰かに似ている。でも言っていいのかわからない。

私達、中二病の「桜人」達は困惑した。ここの患者は、午前零時、必ず幽霊を見ることができる。

 それよりも、少年よ。出会ってすぐにしたことは、後で必ず謝ろう。

 そして、手から炎を出されて髪を焼かれた私は。

 熱くない。焦げ臭くもない。頭部に片手をやって確かめる。日差しの温もりしか感じ取れない。

 看護師が慌てている。しかし、冷静さは、だめだ。この場の誰もがはてなと感動と感激と、一部悲鳴で埋まっている。やっぱり影なのか黒い服のいたずらな動きなのか。炎は、幻?

 洗面所に走って鏡と水で確認事項をおさらいしたいが。

「ユキユ。」

私の服から伸びた影に口をくるまれて、さぞ硬く結ばれている炎重(えんえ)は。

「ぜんっぜん、苦しくない!」

なんだこれ。

なんだそれ。

なんだあれ。

私は、さっきまでの今すぐにでも外見についてからかってきた奴の呼吸を止めたい思いを、……ほどいた。

 はらはら、と、心がほどけるように一緒に消えゆく黒影。

「看護師さん。」

私は、冷静になってこの日のために取っておいた言葉を紡ぐ。

「アリアさんのところへ、この少年を連れて行き、名前をつけます。」

はっきり決まっていたわけじゃない。

ただ。

これが幽霊マリアと、病棟にある鐘楼と、鐘楼守りの願いであると感じた。

行こう。すべてのさくらひとの、〈司令塔〉。

アリアのもとへ。

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