第27話 スカーラ・ダンジョン

 くらっとするワープが終わって、クラス全員がダンジョンの入り口前広場に転移した。高層ビルみたいなダンジョン。中のエレベーターみたいなのに乗ってボタンを押したら、好きな階にワープできるそうだ。親切設計!


 ライバルの3年生も来ていた。みんなやる気でメラメラしている。

 イザベラ・サークルは上級生がいないから仕方ないけど、他のサークルはそうじゃないよね。でも、ダンジョンで運動会があるって、2年生は誰も知らされてなかった。きっと、わざとだ。

 うん、中間考査で100点ほしいもんね。私も来年3年生になったら、絶対2年生には秘密にしようっと。


 開会宣言の後、各競技が一斉にスタートした。借り物競争のくじ引きで、私が引いた封筒の中には「薬草5個」と書かれたカード。

 なんか、初めての冒険者みたいで、ちょっとワクワク。薬草採取が基本だよね。このダンジョンのどこかに薬草畑があるのかな?


「何言ってんだ。スライムを倒してぶん取るに決まってるだろ。ほら、行くぜ」


 ロイに引っ張って行かれた。

 スライムを倒したら返せないよ。それ、借り物競争じゃなくて、ただの強奪。

 待って、ロイ、歩くの速い。足の長さが違うから、そんなに速く歩けない。ってこれ競争だった。走ろう。


 ダンジョンの1階は、洞窟みたいな薄暗い道が続いている。高層ビルの中に洞窟があるって、さすがダンジョン。

 時々、上からぽたりと水が落ちてくる。石畳の床の水たまりを避けながら進んだ。

 スライムはすぐに見つかった。というか、ロイに怯えて壁の隅っこに隠れて震えている。なんか、かわいそうだな。いやいや、これは害虫、大きなナメクジだと思ってやっつけよう。ごめんね。

 目をつぶって呪文を唱える。ロイにもらった魔石を使う。

 いでよ。高枝切りバサミ!


 長い棒がついたセラミック製のハサミに変えた。スライムにハサミ? って笑わないでね。ただのハサミじゃありません。私が手に持つと、契約指輪の効果のせいで、なんと、炎の高枝切りバサミになるのだ。すごいぞ! 炎属性付与!


 ちょんっとつついただけで、スライムはジュッと消えた。楽勝だったよ、と横で見守ってくれていたロイに自慢げに告げてから薬草を探したけど。


「このスライム、薬草持ってない」


 なんで?

 ロイは床に落ちていたゼリーみたいなネバネバを手に取った。


「スライムゼリーだな。レアドロップ品だ」


 なるほど。運がいいのか。いや、この場合悪い。早く薬草を集めなきゃ。


 だけど、その後も、


「また、スライムゼリー! なんで、ここのスライムは薬草を持ってないのよっ!」


 高枝切りバサミは重いし、気は焦るし、スライムは逃げるし、石畳はでこぼこで歩きにくいし、疲れてイライラしてきた。


「変だな。じゃあ、2階に行くか。確か、マンドラゴラも薬草をドロップするな」


 2階は、1階とはがらっと変わって、草木がうっそうと生い茂るジャングルだった。草をかき分けて進む。


「それがマンドラゴラだ。うるさく泣くから絶対引き抜くなよ。そのままハサミで倒せ」


 ロイが見つけてくれた草を炎の高枝切りバサミでちょんと切った。やっぱり草モンスターには炎だよね。マンドラゴラはジュッと消滅して、赤紫の葉っぱを残した。

 やった! やっと一つめ。


「ん? これは、薬草じゃなくて目覚まし草だぞ。どんな昏睡状態でも目覚めさせる薬の材料で、レアな素材だ」


 へ?

 その後も、出てくるのは目覚まし草ばかり。


「また、レアドロップだ。お前、なんか変だぞ」


 なんでよ! 私が欲しいのは、ただの薬草だってば!

 薬草出してよ!

 ジュッと高枝切りバサミでマンドラゴラを焼きながら叫びたくなった。


 あ、


 そういえばシャルにもらった契約指輪の付与にあったような。レアドロップ率90%増って……。



 50体以上のマンドラゴラを駆除して、ようやく薬草を5個集めた。

 ふう、つかれた。ようやく戻れる。

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