第81話 ブラックフライデイ2
081 ブラックフライデイ2
都内某所、電子要塞。
「デフコンレベルを5から4へと変更します」
戦争中レベルから少し下がって緊張レベルになったのであろうか。
「アンナさん、どう変わったの」
「はい、手配中写真のハッキングに成功し、すり替えました、現在の手配写真から、新しいものに変更されれば、かなり脅威度が下がります。」
偽写真を差し込んだようである。
「それと、警察、公安の活動量が大きく減衰したことを確認、資金遮断作戦が効果を発揮した模様です」
「順次、SOG隊員および家族の手配写真への浸透を行います」
SOG隊員たちは、都内某タワーマンションに缶詰状態だ。
彼らの家族は、日系アメリカ人として、パスポートを取得し、アメリカへと出国している。
全て本物である。
大使館で取得した。
勿論、日系アメリカ人であるはずがないが、大使館員は、パスポートを発効してくれた。
俺が、懇切丁寧にお願いした甲斐があったというものだ。
「ありがとう、アンナさん。お礼に、今日は豪華ディナーでも食べに行こう。何か着飾るものの一つも買わせてほしい。」金が余って使う場所がないのだ。
本当は、この電子要塞に金が必要になるはずだったのっだが、彼女が資金まで、よそ様から巻き上げてくるので使いどころを見出すことができないのだった。
「ありがとうございますマスター。しかし、私とアスナ(3号)は電子戦の継続が必要ですので、アイナといってきてください、我々は意識を共通化しているので問題はありません」
「本当にそれでいいのか」
「本当にそれでいいのです、楽しんできてください」
「ありがとうアンナさん」
「いえ、お気遣いいただきありがとうございます」
・・・・
俺とアイナさんは、街へと繰り出した。
流石に、テレビの番組でも、俺の報道というかネタはあまりやらなくなった。
とにかく飽きるのが早いのだ。
テレビにとっては、犯人の逮捕などどうでもいいのだろう。
騒げればそれでいい的な刹那さを感じさせるものがある。
銀座の高級すし店で舌鼓をうち、久しぶりに美味いものを食べることができた。
それから、高級時計などを買って、バーで、ブランデーなどを嗜んだ。
流石に警視庁である。
見当たり捜査員に声を掛けられる。
「ちょっといいですか」
「何ですか」
捜査員は何かを見ているが、何かが違うようだ。
そう、今まで覚えていた写真と最新の写真が少し違うのだ。
「免許証をみせてもらえますか」
「任意ですよね」
「ええ、ですが、」
粘られると問題だが、免許証を出さないとすると、こいつは黒だ。捜査官は勿論確信しているのだ。
「免許証が無いんで、パスポートでいいですか」
「はい、勿論」
どう見ても、日本人、日本語もなんらおかしなところがないにも関わらず、まさかの外国人宣言だった。
ロシア国ハバロフスク州 チェーニ・メドベーチェ 男35歳。
「チェーニ・ベドベーチェ、ユウノウ?」読み方を教えてくれたようだ。ロシア語の表記では読み方すらわからないのだ。
「すいません、確認させていただいても?」本庁経由でロシア大使館に問い合わせるのである。そうしたところで、それは本物だったが。
「いや、今、恋人をまたせているんでね」
後ろには、サングラスを外した女性が立っていた。
それは、オーラが放たれるほど美しい女性だった。
「白川安奈!さん」
勿論、見当たり捜査官の彼でもしっていた、国民的なアイドルである。
偽物だが。
「ノーコメントで」
「失礼しました」
「御苦労」敬礼がピシリと決まった。
ロシア軍の幹部なのか?
彼は、あまりにも様になっているその敬礼の姿にそう感じた。
だが、ロシアの軍人が、アイドルを連れているはずもない。
オリガルヒの御曹司なのか!やっぱり金なのか!やっぱり金なんだな!
残念ながら、その解釈は違う。
強さである。
圧倒的な力の保持者を確保するために彼女らは作られるのである。正確には、その遺伝子をだが。
だが、このちょっとした出来事は、すぐに大きな話題になる。
銀座を張っていた芸能週刊誌のカメラマンがその出来事を撮影していたのである。
「国民的アイドルに男の影!白川安奈を撃撮!銀座の夜に消えた二人」
そのような煽情的なタイトルが紙面を飾る。
職質されている男の後ろに、白川安奈が映っていた。
金曜日に発行される週刊誌『〇ライデイ』だった。
「どうしたのですか、参事官、珍しいですねゴシップ誌なんか」部下の品川が入ってきた。
「ああ、私は、アンアンの大ファンなんだ、この男を抹殺せねばならん」
参事官は、それを机に投げ捨てた。
「でも、これって、職質されてませんか」品川が雑誌を見ながらそういった。
「なんだと、アンアンが職質されている男と一緒だと!儂みずから、抹殺してやる」
そして、その写真をよく見る。男の事に興味などなかったので見ていなかった。
そこには、仇敵が映っている。
「なんだと!」
「閣下!」その時側近の上野が飛び込んできた。
「品川」
「失礼します」
「どうした、上野」
「大変です、俺の、口座が、口座が」上野は真っ青になっていた。
「口座がどうした」
「すべての口座から金が消えて、口座自体が閉鎖されたんです!」
「どういうことだ」
「閣下大変です、奴らが!」
彼らの口座とは、関連する隠し口座のすべてと、彼ら自身の口座、彼らの家族の口座すべてである。
話の内容を聞いていた、永田の顔色は真っ青になり次に真っ赤になった。
そして、あまりの怒りのために、真っ黒になった。
個人識別番号、住所、氏名、年齢をもとに、全ての金融関係会社に、国税徴収法上の調査が行われていた。勿論偽造の調査であったが、実際に存在する都税事務所の名を騙り、印影も偽造した手のかかった偽文書を相手方(金融機関)にわかるわけがなかった。
実際には、それは偽造ではなく、支配された税務職員が行ったのだが、誰もそのことに気づくことはなかった。
口座のあった金融機関すべてにハッキングが行われ、資金が流出した。
正に、彼らは、逆鱗に触れてしまったのである。
虎の尾を踏んではならない。しかし、人々はえてして、踏んでからしか気づかない。
永田派のすべての構成員、実際は、永田寄りの人間もすべて一切合切、資金流出と口座閉鎖が行なわれた。
一部の人間たちに大恐慌が引き起こされていたのである。
それこそが、彼らに齎されたブラックフライデイ(暗黒の金曜日)と呼ばれる事象であった。
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