第80話 ブラックフライデイ

080 ブラックフライデイ


脱獄したSOG隊員、それに関係する家族(妻と子)。

それに主犯格、影野の行方は徹底的な捜索にも関わらず全く情報をつかむことができない。

脱獄から一か月、日本国中で大捜索が行われていた。


「何故、つかめんのだ!」永田は、上野に当たり散らす。

「申し訳ありません、警視庁、公安調査庁にも万全の態勢で協力するように言っていますが」と恐縮しきりの上野。


「くそ、役立たずどもめ」

「参事官、それで見返りの方を求められています」

「役にも立たんのに金の無心とは、どういう料簡だ!」

「警察庁から、5000万円、公安から3000万円ほど要求がありました」

「くそ!例の会社の口座から、奴らの会社の口座に振り込んでおけ」

「わかりました」


影野が手にするはずだった金は、永田が実効支配しているペーパーカンパニーの口座に入れられている。その額は、15億円。すでに、内部工作に5億円ほどがつかわれている。


だが、不幸なことに、その日、電子送金システムが相次いでパンクする。

日本のメガバンクのシステムで不具合が発生したのである。

日本を代表するメガバンクの決済システムが落ちるなどとは前代未聞の事態である。

決して起こりえない失態だが、起きたのである。


テレビでは、いまもなお混乱続く、終息の見込みは見えていません。などとレポーターが銀行のATM前で、撮影している。


結局3日間、混乱の後、復旧し、銀行の関係者がお詫び会見を行う。

原因は、未だ不明であった。原因が不明ということは、又起こるということだったが、人々はそれを容認したのである。


だが、その間にも事件は進行していた。

事件は現場で起こっていると、名刑事がいったとおり、現場では、事件が進行していたのである。


「参事官!大変なことが!」

上野が叫びながら走ってくる。

「どうしたのだ」

「参事官お耳を」

「馬鹿な!無いだと。どういうことだ、問い合わせろ」

「はい、今進めていますが・・・」


だが、そのような不幸な事故に見舞われたのは、永田の会社だけではなく。

その振込先の会社でも同様の事故が発生していた。

預金残高消滅事故。

しかし、これは正式な取引で、預金残高をすべて、仮想通貨購入のために出費されていたのである。

仮想通貨購入のIDも知らないから、出せないだけだった。

だが、心配はいらない。出す必要すらないからである。

購入したとたんに、ハッキングされ、奪取されたからだ。

すでに、資金はどこに行ったかすら定かではない。

これは、マネーロンダリングの疑いが濃厚である。


さらに、間の悪いことに、そのような情報が、国税庁に投げ込まれていた。

出所不明の資金が謎の動きを見せ、所得を少なく見せる、それに、マネーロンダリングの疑いがある資金が消えた、などと言う情報である。


東京国税庁が、すぐさま所得税法違反で調査に入ることになる。

数社のペーパーカンパニーの関係者が内定をうける羽目になるのだった。


そんなことを知る由もない、彼らは、資金の喪失で代金の支払いが厳しくなる。


資金問題は、どの陣営も同じであったが、債券を持っている方が強くでるのは当たり前であった。しかし、永田、その場では武力で脅しつけた。いくら彼らが、警察庁幹部であろうが、公安調査庁幹部であろうが、個人で勇者に勝てるはずもない。それは人間である彼らにはわかっていた。


しかし、調査の協力は解消されてしまった。

警察や公安の動きは完全に停止した。

ただ働きで、やれと言われてやる馬鹿はいない。


しかし、テロリスト逮捕は彼らの仕事に一部ではあるので、通常の態勢で行われるだけだ。


そして、銀行からの回答は、「当行は貴社の取引に一切関与しておりません。暗証番号等の保管では、他人にしられぬようにご注意してください」と書かれていた。


「○○め!自分の銀行の脆弱性の問題だろうが!」メガバンクを罵る永田。


勿論、そのような側面もある、脆弱性をついてくるスーパーハッカーがいた。

しかし、もっと簡単な方法もある。

銀行員を支配するのだ、彼等なら、口座の情報を見ることはたやすい。

ついでに言うと、暗証番号などが管理する部署があれば、その部署の人間を支配すればいい。

かってに閲覧されて情報が、メールやスマートフォンなどを経由して送られてくる。

極めて簡単な方法である。


今、永田派に関する人間の絞り込みが行われている。

全ての人材の調査が行われている。

それは、防衛省の内部でも全く同じである。

庁内ネットワークをハッキングすれば、簡単に割り出せる。

これらの情報調査を、眼にも止まらぬ速さで行っている、アンナさんだった。

その瞳は何も映してはいない。虚無の瞳である。


一か月がすぎたのだが、室内には、もう一人のアンナさんが登場していた。

簡単にいうと、するということだった。

情報処理量が増加しているため、3号機は、電子要塞でアンナのサブに回る。


・・・・・・・

「あの~、アイドルの白川安奈さんですよね」

それは、脱獄祝いを都内某所の高級タワーマンションで行っていた時の事である。

その部屋には、有名レストランからのデリバリーの豪華な料理が並んでいた。

そして、誰が呼んだのか、アイドルで女優の白川安奈がいたのである。

若い、浅井は、このアイドルの大ファンだった。


「いいえ違います、北白川アイナです」名前までパクリである。

誰がどう見ても白川安奈だった。テレビで見るより美しかった。当然だ、彼女らは、化粧などしなくても、このクオリティを実現している。しかもPSだ。

プレイステーションのことではない。パーフェクトソルジャーの略である。

実戦でも無類の強さを発揮する。すでに、戦闘プログラムは、成長過程で刷り込まれているからだ。


そして元祖パクリ、アンナさんは今この瞬間も、電子要塞で戦っていた。

彼女らは、睡眠すら必要としないのだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る