第78話 訪問者

078 訪問者


日本中の警察が俺を追っている。

しかし、俺を捕まえることができるのか?

恐らく、警察官全員が死んでも捕まえることはできないだろう。

奴さえ来なければいくらでも逃げることが可能だ。


日本帰還後、約一か月。

アンナさんが着々と準備を続けている。

しかし、何の準備かは不明である。

だが、アンナさんは、2人になった。

非常によく似ている。

しかし髪の色が茶髪になっている。

どうも、判別しやすいようにとの配慮らしい。

どうやって増えたのか?俺は詳しく知らない。

例の装置から発生したようだ。だが、問題はないらしい。

大変な問題だと思うのだが、そうではないらしい。

俺は、少し不安になるが、問題ないといえばそうなのだろうか?

人口減少問題を解決できるかもしれないので気にしないことにした。


どうも、我が弟子たちは、逮捕され、の監獄に収監されているらしい。

アンナさんが、情報を引っ張りだしてきてくれた。


何とも、俺が犯人(極悪人)にされたのである。

各種の映像が合成されたようだ。それらの映像が警察庁の内部や自衛隊のサーバーに存在していたようだ。加工前の原版も存在するらしい。

アンナさんは、闇バイトでハッカーを募り、集団で各種サーバーへのハッキング攻撃を行わせているらしい。


アンナさんレベルになると、もはやお金がいらない。

全ての活動資金が、暗号資産をハッキングして獲得するようになってしまうらしい。

その資産で、闇バイトや各種購入物品などが賄われていく。

正に、自立型AI搭載SP(スーパーソルジャー)だ。

ただし、彼女がコンピュータと接合しているときの表情は見ない方がよいだろう。

瞳孔が完全に開いていて、美しい分とても怖いように見えるからだ。

その表情だけで、ホラー映画になりそうだ。


今や2人になったアンナさんが無言でキーボードを高速で叩きまくる音だけが響いている。

それ以外にも人体から伸びたケーブルが別のコンピュータに接続し、別のハッキング等の作業をマルチタスクで行っている。俺は、見て見ぬふりをした。怖いからだ。


茶髪のアンナさんはアイナさんと命名した。

そのアイナさんと俺は、府中刑務所を訪れる。

監視カメラに姿が映っているだろうが、その画像はすべてアンナさんにより改ざんされていくだろう。


「身分証を」

俺が身分証を差し出す。

その男が驚きの表情で、俺の顔を見る。

「通って良いか」

「はい、どうぞ」

彼らは、俺を知らないらしい。

今や、日本で一二を争う有名人なのにな。

いくつもの、チェックを簡単にすり抜けていく。

彼らの意思などは関係ない。

全て、『支配の魔眼』で方が付く。


下降エレベータの前には、銃を背負った兵士たちがいる。

自衛隊から出向してきているのであろう。

「ここは、誰も通れぬ」

敬礼をすると相手も反射的に敬礼する。

「下に用事がある」

「どうぞ」

だが、下降エレベータには、暗証コードが必要らしい。

「私が」アイナさんは、スーツにスカート姿ととてもできるOL感にあふれている。

ここまで美しいと罪である。

しかし、打鍵しているときの表情は恐ろしいのだが。

彼女が見ているのは虚無である。


何の問題もなく、エレベータが動き出す。


「上杉どうだ、無事か」監視用の小窓から覗きこむ。

「師父!どうしたのですか」

「だから、言っていたのだ。私が帰ればお前達が不幸になると。師父の言葉は父の言葉と同じ、きき訳がなかったために苦労したであろう」と俺。

「師父!」

「助けてやる、お前たちは、被害者だ。仕掛けを作ったのは私だ。家族も含めて、地球でも異世界でも送ってやる。心配するな」

扉を開けたとき、上杉は泣きながら抱き付いてきた。

「よく我慢したな」

「はい、はい」

こうして、皆を救い出す。

皆は憔悴しきっていたが、泣いて喜んだ。


「さて、北畠よ、何か言うことはないか」

北畠だけは、まだ扉のうちである。

「私に何をした!」扉の向こうで激昂する北畠。

「お前、ちゃんと魔眼を譲ってくれると契約したじゃないか」

「何!」

「だから、お前が寝ている間に、お前の魔眼をいただいたぞ」

「謀ったな!」

「愚か者め、その代わり、俺の眼を与えてやっただろうに」

「それで、俺が捕まったのか!」北畠の眼から窃盗映像が出たのはこのためである。


「まだそんなことすらわからなかったのか、そのようなことでは、異世界を生き抜くことはできんぞ、血の付いた竹筒を見ただろう」そう、血の付いた竹筒。それで目をくりぬくのだ。

中国で使われた拷問方法である。

北畠は眠っていたが、俺は地獄の苦痛に堪えて、仕事をやり切ったのである。

それもこれも、『俺の右目が疼く』をやりたかったためであった。


「そんなところまで気づくか!」

「ハハハ、青いな北畠、それにしても、貴様は、師父に対する尊敬の念が足りんようだが、このまま、入っていてもいいぞ、ああ、俺は約束は守るから貴様の金貨は、この窓から流し込んでやる」


「こんな中で金貨をどうやって使えというんだ」

「金貨と馬鹿にするものでもないぞ、私は、重さ相当の金貨を貰ったつもりだったが、俺の卸した金貨が、今やミッシング金貨として大人気になっているんだぞ、図柄がとても美しいのでヒットしているらしい。まあ、どの時代のどこの国のものか不明なのでミッシングなんていわれているがな」金の重さより数十倍の値段に跳ね上がるということだ。


「なんだそれは!」

「高く売れるということだ」

「くそう!」


「やはり尊敬の念が足りんようだな」

「俺を助けないと、あんたも死ぬかもしれないぞ」

「ハハハ、貴様は、皆から聞いた内容を言っているらしいが、お前の契約はあのされているのだ、日本はあの異世界ではないから問題ないぞ」


「申し訳ありませんでした師父」土下座する北畠。

北畠の入神の演技がまたも始まったのであった。


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