第77話 異邦人

077 異邦人


東京都の山中。

異界の印が光りその印が下から上へと移動していく。

それが、終わった時、テロ事件容疑者影野と見知らぬ美女の2人が立っていた。

見知らぬ美女は、アイドルで女優の白川安奈にそっくりだったが、全くの赤の他人である。

しかし、普通の日本人が見ればその人にしか見えなかったであろう。それほど再現度が凄かったということである。


「まずは、装置を展開する場所が必要です。」と美女。

「倉庫でも借りるか?」

「電源が必要になります」

「わかった。ほかには?」

「粉ミルクのようなものがあれば問題ありません、後は、情報端末とそれを接続するデバイスがあれば問題ありません」

「OKだ」


暗闇の中、山を降りる二人。

高速で動いている、明りなどは全くないにも関わらず、全く問題ないらしい。

既に、非人間的といえるであろう。


山を降りると、人家があり、駐車場がある。

「あれにしましょう」

「ええと」

ガチャリと音がする。

まさかの窃盗技術。

ベンツの高級車がいとも簡単にドアを開けた。

「どうやったら」

「知る必要ありません」

まさに、知る必要はない。

エンジンを掛けて発進する。

ライトもつけずに走るベンツ。危険極まりないが、彼らには何の問題もない。

さらに言うと、サングラス迄つけている。

顔ばれを防ぐための用意である。


途中に、道路の近くにあった、車のナンバーを外して交換する。

Nシステム対策のためである。

流石に街道まででると、ライトをつける。

サングラスはそのままであった。


ナンバー交換の間に、安奈さんが運転席に陣取る。

せっかくだから、このベンツAMG運転させてください!


「問題ありません、目的地までの最適ルートが解析されました」

こうして、恐るべき速度で、都内の中心部に侵入していくベンツ。

勿論、パトカーなどがあれば法定速度に変更される。

赤外線取り締まり装置にも反応している。彼女には、赤外線が見えるのだ。


近くのコインパーキングに車を止める。

そこから数ブロック先のビルに入る。高級マンションである。


「おかえり」

「ああ、ただいま」

そこには、外国人の女性ユウコがいた。

「誰それ」怒ることもなく聴くユウコ。

「生体兵器のアンナさんだ」

「そう、アンナよろしく」

「ユウコさん、よろしくお願いします。」奇妙な熊の化身と生体兵器の挨拶が無事終わったようだ。


「ここにある情報端末を使うと、発見されたときに問題があるならば、別の場所に用意をしてください」情報端末とは、パソコンの事である。

「了解した」


次の日、倉庫に来ていた。

空き倉庫である。

「この倉庫を半年ほど借りたい、即時に契約したいから、金は前払いで払おう」

「わかりました」不動産屋のおやじが相手である。

「この倉庫で何をなさるんですか」

「ああ、ちょっと特別な機械を置いておきたくてな、電源がいる。」

「ああ、もともと工場だったので、電力は足りると思いますよ」

「名義は、ユウコ・メドベーチェさんだ。ロシア人だが問題ないな」

「勿論です」

「もし期間が長引く場合は、連絡する」

「今日からで大丈夫なので、手続きはこちらで行っておきますので」

「よろしく頼む、ついでに、俺の顔は忘れてくれ」

「わかりました」不動産屋は素直に返事を返した。


さっそく、内の装置を展開する。

「ところで、この装置は一体何の装置だ」

「気にしなくて問題ありません。」

「本当に?」

「本当です」


とても、不安だ。

というか、背中になぜか冷たいものが流れる。

これが原初的恐怖というものだろうか。


別の場所に、適当なアンナさんのアジトを借りる。

別の不動産屋である。

これも半年前払いで、ロシア人ユウコさん名義で借りる。

金は、腐るほどあった。


情報端末とは、パソコンである。

必要なものを判別する必要があるとのことで、俺とアンナさんは秋葉原に行くことになる。


世間では、重犯罪者影野という男の特集ばかりが流れていて、おもしろくない。

見飽きるほどだ。


俺は、顔にメイクを施され、秋葉原に向かうことになる。

全ての人間に忘れてもらう訳にもいかないからだ。

眼を見て説得する必要があるからだ。


しかし、ここで問題が発生する。

「あの~、女優の白川安奈さんですよね」

サングラスとマスクまでしているのに、発見される。

だから、なぜこのような目立つような外形をもっているのだ!


それは、影野が最も望んだ姿だからである。

彼女らは、そのマスターの最も望む姿を具現化するのだ。

そして、骨抜きにする、飼いならすためなのだ。


「違います」

バシ!電撃が走り、お宅青年が気絶する。

決して、簡単に触ってはいけません。とても危険です。


必要な物品は、相当な量に上り、送ってもらうことになる。


その後彼女は、ア〇ゾンビなどのネット通販を知ることになり、必要なものはすべてそれで買うようになる。


部屋には、何台もの高性能デスクトップパソコンが並び、部屋の外のベランダには、アンテナが立ち並ぶことになる。


彼女は、隠れ家を電子要塞に仕上げようとしていたのである。

俺の見間違いだと思うが、彼女の腕から、何かの線がでてパソコンと直結していたように見えたと思ったがきっと、見間違いに違いない。そうみえるような角度だったのだ。

生物とパソコンは決して直結することはないはずだ!


そんな忙しい日々を送っていたころ、俺は知らなかったが、ある話題がテレビで盛んに報道された。俺は、テロリストの特集に飽きていたので見ていなかったのだが、その話題は、ある天文家が撮影した映像だった。

月面に、何かの影が落ちたのである。しかし、そこには何も存在しない。

だが、影が月面に映ったという、『何だこりゃ!』映像だった。

つまり、透明の何かが影をおとしたのだろうか?

しかも、その影の大きさからすると、透明の何かは全長10Km以上もあると推測される巨大なものだった。

全く、くだらないことだ、あるわけがない。知っていればそんな声を出したかもしれない。


平和な時間が流れていく。

そう、平和なのだよ日本はな。


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